Die Verschweigung K.518 |
ひめごと |
Sobald Damötas Chloën sieht, So sucht er mit beredten Blicken Ihr seine Klagen auszudrücken und ihre Wange glüht. Sie scheinet seine stillen Klagen Mehr als zur Hälfte zu versteh'n, Und er ist jung,und sie ist schön: Ich will nicht weiter sagen. Vermißt er Chloën auf der Flur, Betrübt wird er von dannen scheiden; Dann aber hüpft er voller Freuden, Entdeckt er Chloën nur. Er küßt ihr unter tausend Fragen Die Hand,und Chloë läßt's gescheh'n, Und er ist jung,und sie ist schön: Ich will nichts weiter sagen. Sie hat an Blumen ihre Lust, Er stillet täglich ihr Verlangen; Sie klopfet schmeichelnd ihm die Wangen, Und steckt sie an die Brust. Der Busen bläht sich sie zu tragen. Er triumphiert sie hier zu seh'n, Und er ist jung,und sie ist schön: Ich will nichts weiter sagen. Wenn sie ein kühler,heitrer Bach, Beschützt von Büschen,eingeladen, In seinen Wellen sich zu baden, So schleicht er listig nach. In diesen schwülen Sommertagen Hat er ihr oftmals zu geseh'n, Und er ist jung,und sie ist schön: Ich will nichts weiter sagen. |
ダーメタスはクロエに会うやいなや 熱い目で彼女を見つめた 彼女に想いを訴えようと それで彼女のほほは赤くなった 彼女は彼のひそかな訴えに気付いたのだろう たぶん半分以上は それに彼は若くて、彼女はきれいだ いや それ以上は言うまい 野原にクロエが見えないと それだけで彼が落ち込んでるのが分かる かと思えば喜びいっぱいで跳ね回るのだ クロエを見つけさえすれば 彼は何千もの問いとともにくちづけする 彼女の手に、そしてクロエはされるがままにしている それに彼は若くて、彼女はきれいだ いや それ以上は言うまい 彼女は花をつけるのが大好きだ 彼は毎日その望みをかなえてやっている 彼女は彼のほほをやさしくなでて そして花たちを胸に飾るのだ 花を飾ったおかげて胸は盛り上がり 彼はうれしそうにそれを見つめる それに彼は若くて、彼女はきれいだ いや それ以上は言うまい 冷たくて気持ちのいい小川が 茂みで隠れたところにあれば、連れていくのだ 彼女を その水につかろうと 彼はそっと彼女に近づく こんな暑い夏の日には 彼は彼女を何度でも見つめる それに彼は若くて、彼女はきれいだ いや それ以上は言うまい |
クロエといえばモーツアルトにはそのものズバリの「クロエに(An Chloe) K 524」という歌曲があり、この「ひめごと」と同じような若々しい恋の情景が歌われていますが、よくよく見るとそれぞれの詩を書いた詩人は別人でした。いやこの彼女、「ひめごと」と同じヴァイセの詩では「世間はだまされる K 474」でも登場してきますけれども、こちらではしたたかに恋人を取り替える女性として描かれていますね。日本の歌謡曲で一頃「幸子(サチコ)」というのがあるシチュエーションで必ずお決まりのように登場してくる人物だったように、このクロエというのが当時の歌では田舎の一見純朴だけど実はけっこうしたたか、という娘を描写するときのお決まりの名前、といった感じだったのかも知れません。ちなみにダーメタスとあるのは同じヴァイセの詩になる「魔法使い」で初恋の少女の心を奪った若い男の名でしょうか。けっこう複雑な関係がもつれていますね。
この歌においては、田園的な風景の中、若いふたりの微笑ましい光景が展開していきます。モーツアルトのメロディもここでは(少々の皮肉さを醸し出しはしますが)穏やかにふたりを見守っているかのよう。「いや何も言うまい」と余韻を残して消えて行きます。これも1787年の作品です。
( 2008.08.26 藤井宏行 )