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Der Arbeitsmann   Op.39-3 TrV 189  
  Fünf Lieder
労働者  
     5つの歌曲

詩: デーメル (Richard Fedor Leopold Dehmel,1863-1920) ドイツ
    Weib und Welt  Der Arbeitsmann

曲: シュトラウス,リヒャルト (Richard Strauss,1864-1949) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Wir haben ein Bett,wir haben ein Kind,
Mein Weib!
Wir haben auch Arbeit,und gar zu zweit,
Und haben die Sonne und Regen und Wind,
Und uns fehlt nur eine Kleinigkeit,
Um so frei zu sein,wie die Vögel sind:
Nur Zeit.

Wenn wir sonntags durch die Felder gehn,
Mein Kind,
Und über den Ähren weit und breit
Das blaue Schwalbenvolk blitzen sehn,
Oh,dann fehlt uns nicht das bißchen Kleid,
Um so schön zu sein,wie die Vögel sind:
Nur Zeit.

Nur Zeit! wir wittern Gewitterwind,
Wir Volk.
Nur eine kleine Ewigkeit;
Uns fehlt ja nichts,mein Weib,mein Kind,
Als all das,was durch uns gedeiht,
Um so kühn zu sein,wie die Vögel sind:
Nur Zeit.

おれたちにゃベッドもある、ガキもいる
なあかあちゃん!
おれたちにゃ仕事もある、たっぷり二人分の
それにお日様も雨も風もある
だけどたったひとつだけ足りないものがある
気ままに過ごすために大切なもの、鳥のように
ただ時間だけが

日曜ともなれば野原に出かけるが
なあガキんちょよ
耳に遠く近く響くのは
青いツバメがいちゃつく声だ
おお、おれたちにだってちょっとした晴れ着くらいあらあ
鳥たちみたいに着飾ろうとすればな
ただ時間だけが

おれたちゃ嵐が来るのを感じるぞ
なあわれら大衆諸君よ
ほんの小さな永遠が
おれたちに足りないものはない、なあ母ちゃん、なあガキんちょよ
おれたちを豊かにするもののほかにはな
鳥たちのように大胆になれるためには
ただ時間だけが


デーメルの詞にシュトラウスの曲の組み合わせはけっこうな数があり、このOp.39でも良く知られた「ひそかな歌」や「解き放たれて」がありますが、間に挟まれたこの曲ほど異色なものは他にはないでしょう。ちょっとくだけ過ぎた訳になってしまった感もありますがけっこうなインパクトです。
第一次世界大戦の原因ともなったドイツの急速な工業化は、同時にこのような労働者たちを大量に生み出しました。チャップリンの「モダンタイムス」ではないですが、安い賃金で時間に追われて働き続ける...そんな彼らのことを共感を持って描いているのでしょうか。現代の日本の労働者(私を含め)にも共感できるところも多々ありますが。

第3連がちょっと意味がよく取れなかったのですが、社会主義革命がこれから起こるかのような不穏な雰囲気が感じ取れます。考えてみればアドルフ・ヒトラー率いるナチスも初めは社会主義政党として登場したのでした。そんなことを連想すると、この作品、大変な問題作なのかも知れません。

( 2008.10.01 藤井宏行 )


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