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Weihnachten   Op.61-1  
 
クリスマス  
    

詩: アイヒェンドルフ (Josef Karl Benedikt von Eichendorff,1788-1857) ドイツ
    Gedichte - 6. Geistliche Gedichte  Weihnachten

曲: キーンツル (Wilhelm Kienzl,1857-1941) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Markt und Straßen steh'n verlassen,
still erleuchtet jedes Haus;
sinnend geh ich durch die Gassen,

alles sieht so festlich aus.

An den Fenstern haben Frauen
buntes Spielzeug fromm geschmückt,
tausend Kindlein steh'n und schauen,
sind so wunderstill beglückt.

Und ich wandre aus den Mauern
bis hinaus ins freie Feld.
Hehres Glänzen,heilges Schauern,
wie so weit und still die Welt!

Sterne hoch die Kreise schlingen;
aus des Schnees Einsamkeit
steigt's wie wunderbares Singen.
O du gnadenreiche Zeiten!

市場も通りにも人影はなく
家々には厳かに明かりが灯る
物思いに耽りながら私は小径に迷い込んだ

物みなすべてこの日を祝っているようだ

窓辺では女達が
色とりどりのおもちゃを飾り
そこに立って見ているたくさんの子供達は
嬉しさのあまり身動きひとつしない

それから私は小径を抜け
大きく開けた広場に出た
その時、崇高で、偉大で、神聖な霊感が!
何と世界は広く、静かなのであろうか!

星たちは空で輪を描き
雪のひとひらから
素晴らしい歌声が湧き起こる
おお、この祝福された時よ!

シューマンやヴォルフの作品でおなじみの詩人、アイヒェンドルフの作ったクリスマスのポエムです。ちょっと良く意味が取れなかったところもありますが、素朴な感動がすがすがしい佳品だと思います。このストレートな感情の吐露がこの詩人の持ち味ではないかということで、面白いので取り上げてみました。
曲を付けたウィルヘルム・キーンツルという人ですが、リストの弟子で、指揮者・教育者・批評家・エッセイストにして作曲家というマルチタレントだったそうです。作品の数も100を超えているのだそうですが、現在はほとんど忘れ去られてしまっています。
ただ、ドイツ・オーストリア圏ではオペラ「Der Evangelimann」(宣教師)という作品が今でもポピュラーで、ほぼ同じ年代のフンパーティンク(有名なクリスマスのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」の作者)のような位置付けの人のようです。
彼の歌曲はハイネ、レーナウ、デーメル、アイヒェンドルフといったドイツ歌曲ではおなじみのビックネーム詩人に付けた曲があり、リストやシューマンの作品を更にポップで分かりやすくしたといった趣でなかなかいけます。
このクリスマスの歌も、初めの重々しいムードが、「窓辺では女達が」の所で軽やかで喜びに満ちた表情ををチラリと見せたあと、後半では感情の高まりと共に音楽がクレッシェンドしていき、感動的なクライマックスと共に終わります。
5分以上もかかりますが、クリスマス時期のコンサートのアンコールで歌ったら大変ウケそうな味のある曲です。
この手の知られざる作曲家を発掘してきては紹介してくれるKoch International レーベルから、キムブロウのバリトンにダルトン・ボールドウィンのピアノ伴奏というコンビで入れた録音があり、この曲はそこで見つけました(Koch 314020)
他の曲も分かりやすく魅力的で、もっと聴かれても良い人なのにな、と思うことしきりです。

この歌曲集CDで興味深いことは他にもあって、Richard Wagner『作詞』の「ボナパルト故郷に帰る」というナポレオンにまつわる叙事詩、及びFranz Schubert『作詞』の「我が祈り」という詩に付けた作品が収録されていることです。
大作曲家の詩に付けた歌曲がどんなものになっているか?それは聴いてのお楽しみということで...(ナポレオンの方は私はとても面白かったです)
他にもキーンツルの歌曲集は未聴ですが、これもまたマイナー作曲家を紹介することでは引けを取らないCPOレーベルからも出ているようです。こちらのCDでは「4つの日本の詩」という曲が注目されますので、聴くチャンスがあって面白ければまたご紹介します。

( 2002.12.17 藤井宏行 )


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