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La Chanson des Ingenues   Op.22-1  
  Quatre mélodies
無邪気な者達の歌  
     4つのメロディ

詩: ヴェルレーヌ (Paul Verlaine,1844-1896) フランス
    Poèmes saturniens - Caprices 3 La Chanson des Ingenues

曲: ケクラン (Charles Koechlin,1867-1950) フランス   歌詞言語: フランス語


Nous sommes les Ingénues
Aux bandeaux plats,à l'oeil bleu
Qui vivons presque inconnues
Dans les romans qu'on lit peu...

Nous allons entre lacées
Et le jour n'est pas plus pur
Que le fond de nos pensées,
Et nos rêves sont d'azur...

Et nous courons par les près,
Et rions et babillons
Des aubes jusqu'aux vesprées,
Et chassons aux papillons...

Et des chapeaux de bergères
Défendent notre fraîcheur,
Et nos robes,si légères
Sont d'une extrême blancheur

Les Richelieux,les Caussades,
Et les chevaliers Faublas
Nous prodiguent les oeillades,
Les saluts et les “Hélas!”

Mais en vain,et leurs mimiques
Se viennent casser le nez
Devant les plis ironiques
De nos jupons détournées...

Et notre candeur se raille
Des imaginations
De ces rôdeurs de muraille
Bien que parfois nous sentions

Battre nos coeurs sous nos man tes
A des pensers clandestins.
En nous sachant les amantes
Futures des libertins.

私達は純真無垢
平たいバンダナと緑の目
ほとんど誰も知らない
お話の中に住んでいる

私達は腕を組んで行く
私達が深く考えているよりは
世界はもはや純粋ではないけれど
私達の夢は澄み切っているのに

歩きながら
笑ったりお喋り
明けても暮れても
蝶々を追いかけてばかり

羊飼いの帽子は
頭を涼しくしてくれる
そして服は?とても軽やかなのだが?
純白の生地だ

リシェリューやカサド、
ファブラの役人たちは
私達をじろじろ見ながら
「ああ困った奴等」とばかりにあしらう

そんなあざけりの態度も
あっさりやっつけられてしまう
私達のコートのすその
鉄のようなひだの前には

私達の純真さは笑い返す
そんな気取り屋が囚われている
見えない壁の幻想を
時々私達も感じる壁だけれど

マントの下で心臓は鼓動する
秘密の考えのために
気ままものだけが
愛を知るというその考えを

フォーレの清楚な旋律、ドビュッシーの透明な和声、擬古典的な響きを重視したフランス歌曲2大家の雰囲気を一番良く引き継いでいるのは私の知る限りではこのケクランだと思います。
取り上げている詩も、フォーレがよく作曲している詩人のプリュドムやシルヴェストルといったところが多く、かなりこの人はフォーレを意識しているのかな、と感じさせるところがあります。
1曲1曲が結構長く(5分くらいかかるもの多し)、少々ヘヴィーなところもありますが、フォーレの歌曲のお好きな方はぜひ聴いてみられると良いでしょう。
彼は結構映画好きとして知られていて、チャップリンなどの映画スターを描写した「Seven Stars Symphony」や、キプリングの作品に感化された「Jungle Book」などが有名なので、なんとなくキワ物のように思っている方も多いかと思いますが(私だけか?)、決してそんなことはありません(少々個性的なことは認めるが...)。
ご紹介のこの曲はヴェルレーヌの詩に付けていますが、ユーモラスな曲想はドビュッシーが同じ詩人の作品「操り人形」に付けた曲を思わせます。ただ、フォーレを思わせるような典雅さもまたそこはかとなく漂い、なんとも不思議な仕上がりになっています。ヴェルレーヌとしてもこれは少々異色な部類の詩になるのではないでしょうか?
ケクランの歌曲集は、フランス歌曲ではセブラックとか渋いところを突いてくれるHyperionレーベルに、ソプラノのルブランが録音したのがあってなかなか良いです。
映画好きの面目躍如で、往年の女優リリアン・ハーヴェイが演じたグラディスという名の新聞の売り子のことを自作の詩に付けた「グラディスに捧ぐ7つの歌」なんていう珍品も聴けますが、そんな好奇心よりは、ひたすら美しいフランスの調べを堪能してください。

( 2000.11.17 藤井宏行 )


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