Le don silencieux Op.92 |
沈黙の贈り物 |
Je mettrai mes deux mains sur ma bouche,pour taire Ce que je voudrais tant vous dire,âme bien chère! Je mettrai mes deux mains sur mes yeux,pour cacher Ce que je voudrais tant que pourtant vous cherchiez. Je mettrai mes deux mains sur mon coeur,chère vie, Pour que vous ignoriez de quel coeur je vous prie! Et puis je les mettrai doucement dans vos mains, Ces deux mains-ci qui meurent d'un fatigant chagrin!... Elles iront à vous pleines de leur faiblesse, Toutes silencieuses et même sans caresse, Lasses d'avoir porté tout le poids d'un secret Dont ma bouche et mes yeux et mon front parleraient. Elles iront à vous,légères d’être vides, Et lourdes d’être tristes,tristes d’être timides; Malheureuses et douces et si découragées Que peut-être,mon Dieu,vous les recueillerez! … |
私は両手を置こう この口の上に 黙っているために 私があなたに伝えたくてたまらないことを とても愛しい魂よ! 私は両手を置こう この目の上に 隠しておくために 私がこんなにもあなたに探して欲しいと願っていることを 私は両手を置こう この胸の上に 愛しい命よ あなたに知られないように この心があなたに願っていることを それから私はそっとあなたの両手に触れさせるのだ この両手を 疲れ悲しみで死にそうな!... 両手はあなたに向かって行くだろう 弱々しく すっかり沈黙して 愛撫すらなしで ひとつの秘密の重みを支えていることに疲れ果てたと そう私の口も 目も 額も語っている 両手はあなたに向かって行くだろう 空っぽなので軽やかに けれど悲しいので重々しく 臆病ゆえに悲しく 不幸で やさしくて こんなにも打ちひしがれているのだ だからきっと 神様 あなたはこの手を包んでくれるだろう |
同世代の詩人の詩に曲をつけることの多かったフォーレにおいては、現時点(2008年)において日本で著作権が生きている作品というのは皆無といってもよいはずでした。フォーレ自身も1924年に亡くなっていますからよもやここでこのようなお知らせをすることになろうとは私も思いませんでしたが、この1906年に書かれた歌曲、作詞のジャン・ドミニク(ペンネームで、本名はマリー・クロセットという女性詩人)は1875年生まれで1952年没ということですので、フランスの戦時加算を考慮すると2013年までは日本では歌詞が掲載できないということが判明致しました。もっともこの詩、日本語に非常に訳しにくいものでしたのでホッとしているところもございますけれども。
ほんの一部だけですが大意を記しますと
「ぼくは君に思っていることを知られないために口に手を当て、ぼくの思いが表れている目を見られないように目に手を当て、心を知られないために胸に手を当てる、それからその両手をあなたの両手に触れさせる...」詩を読んでみてのイメージは宗教的な隠喩を感じさせるように私には思えたのですが、私の見つけられた範囲での内外の解説では単なるラブソングという解釈でした。音楽の雰囲気はなかなか良いです。この時期の歌曲作品の中では一、二を争う親しみやすさでしょうか。
(2008.10.01)
詩人の著作権が既に切れましたので原詩と訳を追加しました。
( 2016.01.16 藤井宏行 )