La fleur qui va sur l'eau Op.85 Trois mélodies |
水の上の花 3つのメロディ |
Sur la mer voilée D'un brouillard amer La Belle est allée, La nuit,sur la mer! Elle avait aux lèvres D'un air irrité, La Rose des Fièvres, La Rose Beauté! D'un souffle farouche L'ouragan hurleur Lui baisa la bouche Et lui prit la fleur! Dans l'océan sombre, Moins sombre déjà, Où le trois mâts sombre, La fleur surnagea L'eau s'en est jouée, Dans ses noirs sillons; C'est une bouée Pour les papillons Et l'embrun,la Houle Depuis cette nuit, Les brisants où croule Un sauvage bruit, L'alcyon,la voile, L'hirondelle autour; Et l'ombre et l'étoile Se meurent d'amour, Et l'aurore éclose Sur le gouffre clair Pour la seule rose De toute la mer! |
ヴェールに包まれた海の上 苦い濃霧のヴェールに ひとりの美女が歩いていた 夜、海の上を! 彼女は唇にくわえていた いらだっているようなしぐさで 情熱のバラ 美しきバラを! 荒れ狂う風とともに うなりを上げる嵐は 彼女の唇にくちづけし そして彼女から花を奪った 暗い海の中 もうそれほど暗くなくなったが 三本マストの船の沈んだところに その花が浮かんでいた 波はその花を弄んだ その暗い水脈で その花はブイとなった 蝶々たちのための しぶきも、うねりも その夜からは 砕け 突き上げる 激しいとどろきの音も ハルシオンも 帆も 飛び回る海燕も 影も 星も 愛を死なせ 生まれてきた夜明けは 澄んだ深い水の上で ただこのバラのためだけにある 海のすべてのものの中で! |
理屈っぽく読むと意味がよく通らない部分が多々ありますが(私が理解できていないだけかも知れないですけれど)、視覚的なイメージは大変に鮮烈なところのある詩です。モノクロ映画での海の情景の中に、一点だけ赤い色の花が波間に漂っているかのような、そんなことを訳しながら思いました。フォーレの手にかかるとこの詩から感じられるような激しさはあまりない音楽になってはおりますが、ピアノの激しい響きに乗った伸びやかな歌とともに不思議な雰囲気を醸し出してけっこう面白い聴きものです。ひとつだけ詞の補足をしますと、最後のところに出てきますハルシオン(アルシオン)というのは伝説の海鳥で、冬至のころに風波を静めてくれる鳥なのだそうです。
( 2008.10.01 藤井宏行 )