Ty znal ego Op.34-9 Chetyrnadtsat’ romansov |
お前は彼を知っているから 14のロマンス |
Ty znal ego v krugu bol’shego sveta - To svoenravno-vesel,to ugrjum, Razsejan,dik il’ polon tajnykh dum, Takov poet i ty prezrel poeta! Na mesjats gljan’: ves’ den’,kak oblak toshchij, On v nebesakh edva ne iznemog; Nastala noch’,i svetozarnyj bog, Sijaet on,nad usyplennoj roshchej! |
お前は彼を偉大な光の中で知っているから わがままで脳天気な、不機嫌な 下品で粗野で、あるいは謎めいた考えで一杯の奴と それこそが詩人と思い、そして軽蔑するのだろう! だが月を見よ:太陽のもとでは薄い雲のように 空の中でまるで力がない けれど夜には煌々と輝く神として 眠る木立の上を照らしているのだ |
チュチェフは現代のロシアでは大詩人として知られていますが、その存命中はほとんど無名だったのだといいます。ほぼ同年代のグリンカはおろか、キュイやリムスキー=コルサコフといった歌曲作家にも取り上げられることもなく、チャイコフスキーが数曲取り上げている他はほとんどこのラフマニノフなどよりあとの世代の歌曲のテキストとしてしか目にすることはできません。しかしこのラフマニノフにとってはとても大切な詩人であったようで、彼の歌曲の代表作の一つとも言える「春のせせらぎ」はじめいくつもの傑作歌曲を彼の詩で書いています。
この曲はあまり取り上げられることもなく知られざる作品となっていますが、おそらくはラフマニノフの詩人に対する敬愛が書かせたのでしょう。力強くこの詩人の自負心を聴き手へと語りかけます。
( 2008.10.12 藤井宏行 )