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Hejsi,vy siví volci    
  Zápisník Zmizelého
ホイサ、灰色の牛たちよ  
     消えた男の日記

詩: カルダ (Ozef Kalda,1871-1921) チェコ
      

曲: ヤナーチェク (Leoš Janáček,1854-1928) チェコ   歌詞言語: チェコ語


Hejsi,vy siví volci,
bedlivo orajte,
nic vy sa k olšině
nic neohledajte!

Ode tvrdéj země
pluh mi odskakuje,
strakatý fěrtúšek
listím pobleskuje.

Gdo tam na mne čeká,
nech rači zkamení,
moja chorá hlava 
v jednom je plameni.

ホイサ、灰色の牛たちよ
気をつけて耕せよ
あのハンノキの森の方になど
目をくれるんじゃないぞ!

固い地面から
鋤が跳ね上がる時
派手な色のスカーフが
木の葉の陰にちらついてる

あそこで俺を待ってるやつなんか
石になっちまえ
俺のいかれちまった頭に
火がついちまったじゃないか


激しいいらだちを表わす曲です。牛たちに対してハンノキの森に目もくれるな、と言っているのはもちろん自分に強く言い聞かせている言葉ですね。よもやあの娘が自分の畑のそばで待ち構えていようとは...ところがなぜか最後の「石になっちまえ」という呪詛の言葉のところから急に甘美なメロディで憧れるように歌います。もう娘の魔力に囚われて逃れられなくなってしまったのであろう心を見事に表しています。このメロディは第3曲でちらっと姿を見せた「恋の動機」とも言えそうなメロディ。今度ははっきりと姿を現します。伴奏では激しい苛立ちを表し続けながら、この甘いメロディはもう一度繰り返されて終わります。
一部の訳では、冒頭を「うすのろ、まぬけども」などと、畑で働く農民仲間と取れるようにもしているものがあります。Volciというのがチェコ語の辞書に見つからなかったので判断がつかなかったところもありますが、Voliというのが雄牛という意味だそうですので多分その訛りであろうと考え、ここでは多くの訳の通り牛と解釈しました。方言だから「ベコ」とでもした方が良いのかも知れませんけれど。(ドイツ語の辞書を見ると、Ochsenが去勢された牡牛の他にこの「うすのろ」の意味もありましたのでこのあたりとも関係するのかも知れませんけれど)
また「ハンノキの森」と訳したのもちょっと意訳に過ぎるかも知れません。ただこれから彼が分け入って行き娘と逢瀬を重ねるところ、やはり鬱蒼たる深い森であって欲しいところなので「森」という言葉を入れさせて頂きました。

( 2008.10.10 藤井宏行 )


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