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Il trovatore in caricatura    
  Un hiver à Paris ou Rêveries Napolitaines
吟遊詩人のカリカチュア  
     パリの冬 あるいはナポリの思い出

詩: ボロシーニ (Lorenzo Borsini,1800-1855) イタリア
      

曲: ドニゼッティ (Domenico Gaetano Maria Donizetti,1797-1848) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Era notte e la campana
Dava un tocco ogni secondo - don,don.
Gracidar s'udia la rana
Del pantano nel profondo - crà,crà.
Il chiaror di mesta luna
Riflettea sulla laguna,
Allorché giunse al castello
Il meschino trovator.
Ma trovò chiuso il cancello,
Eran tutti in letto allor.
Osa gli occhi appena estorre
Il figliuol della sciagura;
Vede i merli della torre,
Del veron vede le mura,
Ed ascender su pe' vetri
Vede i lemuri e gli spettri.
Vede un gatto soriano
Che correva su e giù - gnao.
Ed un ombra di lontano
Gli parea d'un tal che fù.
Rifinito dal viaggio
Move i passi lenti lenti
Alla chiesa del villaggio
In fra i salici piangenti,
E la croce in suo pensiero
Salutò del cimitero.
Ah,sventura! Batte invano,
Chiede invan la carità,
Ché risponde il sagrestano,
“Il curato non ci sta.”
Era notte ed il meschino
Stava in mezzo della via,
E la campana fea don,don.
Senza il becco d'un quatrino
Per andare all'osteria,
E la rana fea crà,crà.
Non avea trovato un cane
Che gli desse alloggio o pane,
Onde il misero languente
Dicea preso dal dolor,
“Se non posso trovar niente,
Perché faccio il trovator?”


今は夜 鐘が
毎秒のように鳴っている-ディン・ドンと
ゲコゲコ鳴くのはカエルだ
水底の方から-ゲロゲロゲロと
悲しげな月の光が
入江を照らしている
そこへ城へとやって来ましたるは
見るも哀れな吟遊詩人
もう城の門は閉まっているのに気がついた
人々はみんなベッドの中なのだから
彼はそれでも目を上げた
この不幸の息子のやつは
見るがいい 城の塔の壁には
壁にはバルコニーがあるではないか
そしてあの窓まで登るならば
死霊や幽霊を見られるであろう
彼は一匹のブチ猫を見る
やつは登ったり降りたりしてる-ニャーオ
そして遠くから見たその影は
いにしえに生きた人の影のようだった
旅に疲れ果て
その足取りはゆっくり ゆっくり
村の教会堂へと向かう
すすり泣く柳の木々を通り抜けて
そして横切るのだ 彼の頭の中では
影は墓地に挨拶している
ああ、不運!むなしく戸を叩き
むなしく救いを求めるが
寺男の答えはこうだ
「司祭はここにはおられません」
今は夜中だ 哀れな男は
道の真ん中にいて
そして鐘が鳴る トン ドンと
ビタ一文も持たぬがゆえに
宿屋にいくこともできないのだ
そしてカエルがゲロゲロゲロ
彼はだれも見つけられなかった
泊まるところやパンをくれる人を
哀れにやつれ果てて
彼は苦悩から逃れようと言った
「もし何も見つけられないのなら
 なぜ俺は吟遊詩人なんだ?」


イタリアのオペラ作曲家ガエタノ・ドニゼッティにはオペラばかりでなく、こんな感じの長大なバラード風の歌がいくつもあります。ダンテの「神曲」に基づく荘厳なものもあれば、こんな感じのユーモアあふれる楽しいものまで、イタリア語に付けたもの・フランス語に付けたもの、ソロからデュエットまで多彩に取り揃えられています。
この曲はイタリア語のソロ、バスやバリトンのレパートリーでしょうか。カエルやネコの鳴き声も出てきてとても楽しい歌です。苦手なイタリア語ということで、何ヶ所か意味が良く分からなかったところもあり、訳文も意味不明となっているところもありますがご容赦ください。
Meridianレーベルのドニゼッティ歌曲集CDで、Ian Caddyのバスによるとっても洒脱な歌が聴けます。このCD、フォルテピアノの伴奏をモーツァルトなどの演奏で鳴らしたメルヴィン・タンがやっているのも興味深いところ。
この録音で、日本では不当なほどに低い評価しか受けていないように思えるこのイタリアの大作曲家の傑作をひとりでも多くの方に聴いて頂ければと思います。「結婚バンザイ」なんていう歌もサイコーに愉快ですし、ダンテの神曲からのカンタータもユニークな聴きものでした。。

( 2008.09.11 藤井宏行 )


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