TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Adieux à la vie!    
  Péchés de vieillesse,Vol II: Album français
さようなら!人生  
     老いの過ち第2巻:フランスのアルバム

詩: パチーニ (Émilien Pacini,1810-1898) フランス
      

曲: ロッシーニ (Gioachino Rossini,1792-1868) イタリア   歌詞言語: フランス語


Salut! Dernière aurore
Qui vient pour moi d'éclore!
Lui que mon coeur adore
Il veut partir,je meurs.
Lui que mon coeur adore
Il veut partir... je meurs.

Cruel! Cruel!
Vois mes douleurs!
Céde à mes pleurs!
Toi que j'implore,
Vois mon tourment mortel.
Cruel! Cruel!

T'aimer,c'était la vie
Qui m'est par toi ravie.
Ton coeur ingrat m'oublie,
La mort est mon seul voeu.

Au jour je dis adieu,
Amis,ma mère,adieu!
Son coeur ingrat m'oublie;
La mort est mon seul voeu.
Amis,ma mère,adieu
Amis,ma mère,adieu!

T'aimer,c'était la vie
Reprenez-la,mon Dieu!
Terre adieu!
Ma mère,adieu!

ようこそ!最後の夜明けよ
あたしのためにやってきてくれたのね!
あたしが心から愛したあの人
あの人は去ってしまい 私は死ぬの
そう 私は死ぬ そう 私は死ぬ
あの人は去ってしまい...私は死ぬの

ひどいわ! ひどいわ!
あたしの悲しみを見てよ!
あたしの涙を分かってよ!
こんなにお願いしてるのよあなた
あたしの死にそうなほどの苦しみを見てよ!
ひどいわ! ひどいわ!

ああ!あなたを愛すること、それが人生だったわ
それが今 あなたによって奪われるのよ
あなたの冷たい心があたしのことを忘れたんだから
死んでしまうことがあたしのたったひとつの望みなの

今日はあたしのお別れの日
お友達も、お母さんも さよなら!
彼の冷たい心があたしのことを忘れたんだから
死んでしまうことがあたしのたったひとつの望みなの
お友達も、お母さんも さよなら
お友達も、お母さんも さよなら!

あなたを愛すること、それが人生だったわ
天に召しませ、あたしの神様
この世よ さよなら!
お母さん さよなら!


けっこう内容的には悲壮な決意を歌っていますが、何となく詞を見ていてもあまり切実感が湧いて参りません。全然死ぬ気はないんだけれども彼の気持ちを再び引き付けようと、手首なんかをちょっと切って「死んでやる〜」と叫んで騒ぎを引き起こしている女性をイメージしてしまいましたので、訳語もそんな女性の気持ちになりきって作ってみました。
ロッシーニが書いた音楽も、恐らく私が感じたのと同じようなことをイメージしながらのものでしょう。何が強烈といって、この歌、これだけの長さの歌詞を延々とひとつの音で歌っているのです。音の上がり下がりが全くないですから、たぶん世界で一番歌っていて楽しくない歌ではないかと思うのですが、こうすることでロッシーニのこの詞に対する皮肉っぽい眼差しが浮かび上がってきました。
ピアノ伴奏の方はメロディアスに、荘厳になったりおどけたりと多彩に表情を変えながら付けられているので更に強烈、ベースが優雅なワルツなのでより一層この狂言っぽさが強調されています。歌詞がフランス語なのも何とも言えず味がありまして、「お友達も、お母さんも さよなら」のところがしつこいくらいに繰り返されるところなどは思わず笑ってしまいます。

ロッシーニ晩年の作品「老いの過ち」の第2巻「フランス風のアルバム」の12曲のうちの第9曲です。

( 2008.09.08 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ