The Roadside Fire Songs of Travel |
道端の火 旅の歌 |
I will make you brooches and toys for your delight Of bird-song at morning and star-shine at night, I will make a palace fit for you and me Of green days in forests,and blue days at sea. I will make my kitchen,and you shall keep your room, Where white flows the river and bright blows the broom; And you shall wash your linen and keep your body white In rainfall at morning and dewfall at night. And this shall be for music when no one else is near, The fine song for singing,the rare song to hear! That only I remember,that only you admire, Of the broad road that stretches and the roadside fire. |
俺はお前にブローチや髪飾りを作ろう お前に喜んでもらえるように 朝の鳥の歌と 夜の星の輝きで。 お前と俺とにぴったりの宮殿を作ろう 森の緑色の日々と 海の青色の日々で 俺は台所をしつらえるから、お前は自分の部屋を整えるがいい 川が白く流れ、花が明るく輝くところで 君の白いリネンを洗い、白い服のままでいるがいい 朝の雨の中でも、夜の露が降りる時も そしてこれは音楽として、お前の他に誰もいないときには 歌うのが素敵な歌に、めったに聴けない歌になるだろう! 俺が覚えているただひとつのもの、お前が憧れるただひとつのもの それはずっと続いて行く広い道と そして道端の火の歌なのだ |
原詩集では11番目の詩です。これはこの歌曲集においては、シューベルトの「冬の旅」で言えば「春の夢」のような位置付けでしょうか。ここで歌われているのはもはや捨ててきてしまった恋人との暮らしへの夢想です。タイトルは詩集にはなく、恐らく作曲者があとからつけたものだと思われますけれども、それが「道端の火」だというのは恐らくはさすらいの旅のさなか、道端の焚き火にあたっていてふと浮かんだ夢想なのだ、ということを言っているのでしょう。
最後にまた現実の旅の情景にあっさりと引き戻されるのはちょっと皮肉です。ただここで音楽が暗転するわけではないのがシューベルトの「春の夢」とは違うところですけれども。
リズミカルに脈打つピアノと共に夢見るようなメロディが歌われますが、明るい曲想ながらなぜか儚さを感じさせる音楽です。歌曲集においては第1曲の「放浪者」とならんでとても印象に残る曲ではあるのですが...
( 2008.09.15 藤井宏行 )