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Madrigal   Op.4  
 
マドリガル(いにしえのスタイルで)  
    

詩: ボニエール (Robert de Bonnières,1850-1905) フランス
      

曲: ダンディ (Vincent d'Indy,1851-1931) フランス   歌詞言語: フランス語


Qui jamais fut de plus charmant visage,
De col plus blanc,de cheveux plus soyeux;
Qui jamais fut de plus gentil corsage,
Qui jamais fut que ma Dame aux doux yeux!

Qui jamais eut lèvres plus souriantes,
Qui souriant rendit coeur plus joyeux,
Plus chaste sein sous guimpos transparentes,
Qui jamais eut que ma Dame aux doux yeux!

Qui jamais eut voix d'un plus doux entendre,
Mignonnes dents qui bouche emperlent mieux;
Qui jamais fut de regarder si tendre,
Qui jamais fut que ma Dame aux doux yeux!

誰がかつてこんなに素敵な姿をしていただろうか
白いうなじと絹のような髪
誰がかつてこんなに奇麗なドレスを着ていただろうか
やさしい目をした僕の恋人の着ているものほど

誰がかつてこんなに魅力的な微笑みをしただろうか
心をうきうきさせる微笑みを
顔がヴェールで隠されていても美しい
やさしい目をした僕の恋人の笑顔ほど

誰がかつてこんなに美しい声をしていただろうか
そして口元からこぼれる美しい歯を
誰がかつてこんなに優しい姿をしていただろうか
やさしい目をした僕の恋人ほど!

私が子供の頃の音楽の教科書で、結構重要な作曲家として載っていて印象に残ってはいたのですが(名前もカッコイイですし)、クラシック音楽マニアになってもなかなか聴くことのできない謎の作曲家がこのダンディでした。代表作「フランスの山人の歌による交響曲」はともかく、他の作品を耳にすることは皆無といっても良いのではないでしょうか?
ヴァイオリンソナタとかピアノ3重奏曲など室内楽は、師匠のフランクの典雅で品のあるスタイルを踏襲していてなかなか聞き応えがあるのですが、フランクほど「艶めかしくない」のがいまひとつ聴かれない理由かも知れません。本質的に生真面目な人だったのかも。
そんな彼の書いた歌曲、私は初めて耳にしましたが、副題に「いにしえのスタイルで」とあるように典雅一点張り。
詩は確かにシャルル・ド・オルレアン公でも書いていそうなおおらかで素朴なものですが、付けられた曲はリュートの伴奏でしみじみ歌われたらよく似合いそうなほのかな悲しみを湛えた上品な歌になりました。
この曲も、フィッシャーディースカウの歌った「ベルエポックのメロディー」(Teldec)でしか聴けないと思うのですが、アーンやサン・サーンス、シャブリエやフォーレ、そしてフランクの自己主張の強い歌の中にあって、ショーソンの歌曲とともにひそやかで目立たない歌ではありました。
それがこの人の美質なのでしょうか。なかなか聴く機会に乏しいので何とも言えないのですが...

( 2003.11.10 藤井宏行 )


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