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Ku-taxkara kusu    
  アイヌの叙事詩による対話体牧歌
阿姑子と山姥の踊り歌  
    

詩: アイヌ叙事詩(知里真志保編) (,-) 
      

曲: 伊福部昭 (Ifukube Akira,1914-2006) 日本   歌詞言語: アイヌ語


ku-kosont-imi
ku-taxkara kusu
 toran toran toran
ku-kosont-kiro
ku-taxkara kusu
 toran toran toran
ku-ninkarihi
ku-taxkara kusu
 toran toran toran
ku-rekutumpe
ku-taxkara kusu
 toran toran toran
ku-tuman-texpis
ku-taxkara kusu
 toran toran toran

ku-kax-imi
ku-taxkara kusu
 rin
ku-kax-kiro
ku-taxkara kusu
 rin
ku-kax-ninkari
ku-taxkara kusu
 rin
ku-kax-rekutumpe
ku-taxkara kusu
 rin
ku-kax-texpis
ku-taxkara kusu
 rin
私の小袖の着物
私が踊れば
 チリン チリン チリン
私の踊りの靴
私が踊れば
 チリン チリン チリン
私の下げてゐる耳輪
私が踊れば
 チリン チリン チリン
私のつけてゐる首飾り
私が踊れば
 チリン チリン チリン
私のしめてゐる飾り帯
私が踊れば
 チリン チリン チリン

おらがのぼろ着物
おらが踊れば
 バタリ
おらがのぼろ靴
おらが踊れば
 バタリ
おらがのぼろ耳輪
おらが踊れば
 バタリ
おらがのぼろ首飾り
おらが踊れば
 バタリ
おらがのぼろ帯
おらが踊れば
 バタリ

(知里 真志保 訳)


伊福部昭氏といえばアイヌやギリヤーク族など、北海道やサハリンの人々の文化に触発された音楽を書く方です。歌曲も私の知る限り、そのすべてがこれらの人々の伝承詩に付けられた音楽です。
エキゾチックといっては済まされない、何か魂の底に響いてくるような懐かしさは、梅原猛氏が描くような縄文文化に至る深い文化の繋がりを照射しているからでしょうか?
さて、子守歌なども味わい深くて是非ご紹介したいのですが、中でも一番インパクトがあるのはこの曲です。
何がと言って、この曲の伴奏はティンパニーで、しかも撥を使い分けて実に土俗的(この言葉も使ったらマズイかな)な味を出しているのです。
詩は二人姉妹の姉に化けて嫁入りしようとした山姥と妹の踊りを対比させて描いたもので、山姥が後半ドタバタと踊るところでは何とマラカスを撥の代わりに使って特殊な効果を上げています。
伊福部歌曲のスペシャリスト、藍川由美さんの熱唱で聴けます。できれば芥川さんのところでご紹介した日本の声楽・コンポーザーシリーズ(ビクター)の方で聴くと色々な歌手による伊福部歌曲の世界が堪能できますが、入手困難であればCamerataの伊福部歌曲全集でどうぞ。
この世界は日本歌曲でも全く独自の世界ですので、苦手な人はとことん苦手かも知れませんが、上に述べたように縄文に至る日本文化の深層に思いを致すに当たっては必聴?の世界だと思います。
(2002.01.02)

作曲者没後100年にあたり他の2曲も取り上げることとしました。この歌詞を採譜し、訳を付けたアイヌ語の研究者知里 真志保(ちり ましほ 1909-1961)の著作権は既に切れているようですので、歌詞の訳についても知里のものを掲載いたします。

( 2014.02.11 藤井宏行 )


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