Ku-taxkara kusu アイヌの叙事詩による対話体牧歌 |
阿姑子と山姥の踊り歌 |
ku-kosont-imi ku-taxkara kusu toran toran toran ku-kosont-kiro ku-taxkara kusu toran toran toran ku-ninkarihi ku-taxkara kusu toran toran toran ku-rekutumpe ku-taxkara kusu toran toran toran ku-tuman-texpis ku-taxkara kusu toran toran toran ku-kax-imi ku-taxkara kusu rin ku-kax-kiro ku-taxkara kusu rin ku-kax-ninkari ku-taxkara kusu rin ku-kax-rekutumpe ku-taxkara kusu rin ku-kax-texpis ku-taxkara kusu rin |
私の小袖の着物 私が踊れば チリン チリン チリン 私の踊りの靴 私が踊れば チリン チリン チリン 私の下げてゐる耳輪 私が踊れば チリン チリン チリン 私のつけてゐる首飾り 私が踊れば チリン チリン チリン 私のしめてゐる飾り帯 私が踊れば チリン チリン チリン おらがのぼろ着物 おらが踊れば バタリ おらがのぼろ靴 おらが踊れば バタリ おらがのぼろ耳輪 おらが踊れば バタリ おらがのぼろ首飾り おらが踊れば バタリ おらがのぼろ帯 おらが踊れば バタリ (知里 真志保 訳) |
伊福部昭氏といえばアイヌやギリヤーク族など、北海道やサハリンの人々の文化に触発された音楽を書く方です。歌曲も私の知る限り、そのすべてがこれらの人々の伝承詩に付けられた音楽です。
エキゾチックといっては済まされない、何か魂の底に響いてくるような懐かしさは、梅原猛氏が描くような縄文文化に至る深い文化の繋がりを照射しているからでしょうか?
さて、子守歌なども味わい深くて是非ご紹介したいのですが、中でも一番インパクトがあるのはこの曲です。
何がと言って、この曲の伴奏はティンパニーで、しかも撥を使い分けて実に土俗的(この言葉も使ったらマズイかな)な味を出しているのです。
詩は二人姉妹の姉に化けて嫁入りしようとした山姥と妹の踊りを対比させて描いたもので、山姥が後半ドタバタと踊るところでは何とマラカスを撥の代わりに使って特殊な効果を上げています。
伊福部歌曲のスペシャリスト、藍川由美さんの熱唱で聴けます。できれば芥川さんのところでご紹介した日本の声楽・コンポーザーシリーズ(ビクター)の方で聴くと色々な歌手による伊福部歌曲の世界が堪能できますが、入手困難であればCamerataの伊福部歌曲全集でどうぞ。
この世界は日本歌曲でも全く独自の世界ですので、苦手な人はとことん苦手かも知れませんが、上に述べたように縄文に至る日本文化の深層に思いを致すに当たっては必聴?の世界だと思います。
(2002.01.02)
作曲者没後100年にあたり他の2曲も取り上げることとしました。この歌詞を採譜し、訳を付けたアイヌ語の研究者知里 真志保(ちり ましほ 1909-1961)の著作権は既に切れているようですので、歌詞の訳についても知里のものを掲載いたします。
( 2014.02.11 藤井宏行 )