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Gesänge des Harfners II   Op.12-3 D 480  
  Wilhelm Meister
竪琴弾きの歌 II  
     ヴィルヘルム・マイスター修業時代

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
    Wilhelm Meisters Lehrjahre (ヴィルヘルム・マイスターの修業時代 1796) Vol.2 Ch.13 Wer nie sein Brot mit Tränen aß

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Wer nie sein Brot mit Tränen aß,
Wer nie die kummervollen Nächte
Auf seinem Bette weinend saß,
Der kennt euch nicht,ihr himmlischen Mächte.

Ihr führt ins Leben uns hinein,
Ihr laßt den Armen schuldig werden,
Dann überlaßt ihr ihn der Pein,
Denn alle Schuld rächt sich auf Erden.

涙と共にパンを食べたことのない者は
苦しみに満ちた夜ごとに
ベッドに座って 泣いたことのない者は
あなた方を知らないのだ 天の力よ

あなた方は我々を人生へと導き
惨めな者に罪を負わせ
それから苦しみを与えるのだ
全ての罪は地上において報いを受けるのだから


Franz Schubert. Neue Ausgabe sämtlicher Werke. Hrsg. von der Internationalen Schubert-Gesellschaft. Kassel,Basel,Tours,London (Bärenreiter-Verlag) 1967- . Serie IV. Lieder: Vorgelegt von Walther Dürr. Bd. 1 Teil a 1970 ,S.89-92.

『ヴィルヘルム・マイスター修業時代』では第2巻13章。ヴィルヘルムは、竪琴弾きに会いたくなり、人に尋ねながら、彼の住む町外れの屋根裏部屋に向かいました。小さな部屋から甘美な竪琴の響きが聴こえてきます。ヴィルヘルムは戸口に忍び寄り、心をかき乱す竪琴と、悲しみに満ちた歌に耳を傾けるのです。途切れがちな歌は、竪琴弾きが時々涙で歌えなくなっているように感じられ、ヴィルヘルムの魂も深く揺り動かされ、ついに彼の両目から涙が流れてきました。彼は涙を止めることできず、また止めようともしませんでした。彼の魂を押さえつけていた全ての苦しみが解かれ、彼は苦しみに全てをゆだねたのです。それがこの歌を聴いた時でした。『ヴィルヘルム・マイスター修業時代』の中で最も感動的で、静かな涙を誘う場面です。
 音楽においては、最後の行における「すべての罪」でピアニッシモからフォルティッシモにまでクレッシェンドし、「地上に」で突然ピアノに変わり、最後の3行がピアノピアニッシモ(ppp) で繰り返されます。急激な強弱の変化の中に、激しい苦しみが描かれ、静かに繰り返されることでさらに深い悲しみと孤独が増すと言って良いでしょう。「竪琴弾きの歌」における詩と音楽の崇高な美しさはことばに喩えようもなく、これ以上述べることは控えたいと思います。

(訳、記述 2002.12.10 改訳 2008.8.14. 渡辺美奈子)

( 2008.08.14 渡辺美奈子 )


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