Gesänge des Harfners I Op.12-1 D 478 Wilhelm Meister |
竪琴弾きの歌 I ヴィルヘルム・マイスター修業時代 |
Wer sich der Einsamkeit ergibt, Ach,der ist bald allein, Ein jeder lebt,ein jeder liebt Und läßt ihn seiner Pein. Ja,laßt mich meiner Qual! Und kann ich nur einmal Recht einsam sein, Dann bin ich nicht allein. Es schleicht ein Liebender,lauschend sacht, Ob seine Freundin allein? So überschleicht bei Tag und Nacht Mich Einsamen die Pein, Mich Einsamen die Qual. Ach werd ich erst einmal Einsam im Grabe sein, Da läßt sie mich allein. |
孤独に身を委ねる者は ああ まもなく独りになるのだ 誰もが生き 誰もが人を愛すのだが 彼を苦しみの中に放っておくのだ そうだ 私を苦痛の中に放っておいてくれ 唯一度でも私が 真に孤独であることができたなら 私は独りではないのだ 恋する男が耳を済ませながら 彼女は独りかどうかと忍び歩く そのように昼も夜も 孤独な私にこの苦しみが忍び来る 孤独な私にこの痛みが忍び来る ああ私がいつか 墓の中で孤独になる時ようやく 苦しみは私を独りにさせるのだ |
Franz Schubert. Neue Ausgabe sämtlicher Werke. Hrsg. von der Internationalen Schubert-Gesellschaft. Kassel,Basel,Tours,London (Bärenreiter-Verlag) 1967- . Serie IV. Lieder: Vorgelegt von Walther Dürr. Bd. 1 Teil a 1970 ,S.85-88.
『ヴィルヘルム・マイスター修業時代』では第2巻13章、シューベルトの歌曲でいえば「竪琴弾きの歌 II」の後に歌われます。ヴィルヘルムは竪琴弾きを訪ね、彼の住む屋根裏部屋の戸口で、流れる涙を止めようともせずに「竪琴弾きの歌 II ― 涙と共にパンを食べたことのない者は」を聴いた後、ドアを開け、竪琴弾きの前に立ち、彼に何か歌って欲しいと願います。竪琴弾きが涙を拭き、優しい笑みを浮かべ、竪琴を手に前奏を弾いた後、ヴィルヘルムひとりのために歌うのがこの歌です。
シューベルトの歌曲では、最後の3行に最も作曲者の心が込められています。「ああ私がいつか/墓の中で孤独になる時ようやく 」では「静かな声で」という指示とともに、ピアノピアニッシモ(ppp) の強弱記号が書かれているのですが、最後の行「苦しみは私を独りにさせるのだ」で突然フォルティッシモに変わり、最後の行だけピアニッシモで繰り返され、さらにこの3行がピアノピアニッシモ(ppp) のまま繰り返されます。詩句に表された死、孤独、苦しみは、悲しみを湛える音楽で深い感動を呼び、詩と音楽が互いに高められているといってよいでしょう。「竪琴弾きの歌」3曲には、崇高なリート芸術の完成があるように感じられます。
(訳、記述 2002.12.10 改訳、追記 2008.8.14. 渡辺美奈子)
( 2008.08.14 渡辺美奈子 )