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The Dodger    
  Old American Songs 1
逃げ上手  
     古いアメリカの歌 T

詩: 英語の民謡 (Folksongs,-) 
      

曲: コープランド (Aaron Copland,1900-1990) アメリカ   歌詞言語: 英語


Yes the candidate's a dodger,
Yes a well-known dodger.
Yes the candidate's a dodger,
Yes and I'm a dodger too.

He'll meet you and treat you,
And ask you for your vote.
But look out boys,
He’s a-dodgin' for your note.

Yes we're all dodgin'
A-dodgin',dodgin',dodgin'.
Yes we’re all dodgin'
Out away through the world.


Yes the preacher he's a dodger,
Yes a well-known dodger.
Yes the preacher he's a dodger,
Yes and I'm a dodger too.

He’ll preach you a gospel,
And tell you of your crimes.
But look out boys,
He's a-dodgin' for your dimes.

Yes we're all dodgin'
A-dodgin',dodgin',dodgin'.
Yes we’re all dodgin'
Out away through the world.


Yes the lover he's a dodger,
Yes a well-known dodger.
Yes the lover he's a dodger,
Yes and I'm a dodger too.

He'll hug you and kiss you,
And call you his bride,
But look out girls,
He's a-tellin' you a lie.

Yes we're all dodgin'
A-dodgin',dodgin',dodgin'.
Yes we’re all dodgin'
Out away through the world.
そうだ、大統領候補殿は逃げ上手だ
そう、有名な逃げ上手だ
そうだ、大統領候補殿は逃げ上手だ
まあ、俺も逃げ上手だけんどな

彼はあんたに会っておごってくれて
そいで投票してくれと頼む
だがみんな気をつけるだよ
彼はあんたの監視をごまかすんだからな

ああ 俺たちゃ皆逃げる
逃げる、逃げる、逃げる
ああ 俺たちゃ皆逃げる
世界中どこへでも


そうだ、教戒師 彼も逃げ上手だ
そう、有名な逃げ上手だ
そうだ、教戒師 彼も逃げ上手だ
まあ、俺も逃げ上手だけんどな

彼はあんたに福音を教えて
あんたのことを罪人だとか言う
だがみんな気をつけるだよ
彼はあんたの小金をごまかすんだからな

ああ 俺たちゃ皆逃げる
逃げる、逃げる、逃げる
ああ 俺たちゃ皆逃げる
世界中どこへでも


そうだ、あんたの彼氏 やつも逃げ上手だ
そう、有名な逃げ上手だ
そうだ、あんたの彼氏 やつも逃げ上手だ
まあ、俺も逃げ上手だけんどな

彼はあんたを抱いてキスをし
あんたを花嫁にしたいとか言う
だがお嬢ちゃんたちよ 気をつけるだよ
そいつはあんたに嘘を言ってんだからな

ああ 俺たちゃ皆逃げる
逃げる、逃げる、逃げる
ああ 俺たちゃ皆逃げる
世界中どこへでも



野茂投手などの活躍で日本でも有名になったアメリカ・大リーグの球団ロサンジェルス・ドジャース、そのチーム名にもなっている“Dodger”というのは調べてみると意外にも実はあまり良い意味では使われることがないようですね。大事なことや責任からヘラヘラと逃げ回るヤツ、といったニュアンスがこの語にはあるようです。それもあってかこの歌のタイトルに「ペテン師」という邦題をつけているのを見ましたが、まあそこまでワルではないにしても何だかこう反社会的な臭いはします。
残念ながら適切な日本語訳が思いつきませんでしたので、私は「逃げ上手」という言葉をあててみました。(もう死語ですが「ズルだ」というのを当てることも考えたのですけれどいまいちです。そんなニュアンスも確かにあるのですけれど)

この歌、1884年のアメリカ大統領選挙の時に歌われ、大流行した曲なのだそうです。この時の民主党の大統領候補グローヴァー・クリーヴランドは実は若い頃に自分の兵役義務を、金を出して身代わりを立てて逃れた(draft-dodger:兵役逃れ)疑惑があったということを、対立する共和党の候補ジェームス・ブレインから執拗に攻撃されていたのだそうです。その後、実はブレインの方にも同じ兵役逃れの疑惑が出て、この時の大統領選挙もまた今に至るもずっと繰り返されている中傷合戦の泥仕合と化してしまったようで、そんな中、この歌が生まれてきました。
ネットで調べると、これはクリーヴランド陣営がブレインを揶揄するために作った歌だ、という解説がありましたが、私がこの曲から受けたイメージは、そんな馬鹿げた泥仕合を第3者の立場からボードヴィルショーのコメディアンがとぼけた歌声でネタにしているというもの。自分を高みに置いての非難でないところがなかなか好感が持てませんでしょうか。それで私の訳もそんな感じをイメージして作ってみました。

コープランドの取り上げた歌詞は「大統領候補殿」と「教戒師(牧師)」それに「あんたの彼氏」の3人だけですが、元歌ではもっとたくさんの人たちが取り上げられていて、
 1番「大統領候補(candidate)」 
 2番「弁護士(lawyer)」
 3番「教戒師(preacher)」
 4番「商人(merchant」」
 5番「農夫(farmer)」
 6番「保安官(sheriff)」
 7番「将軍(General)」
 8番「あんたの彼氏(lover)」
と続きます。これだけ出てくればなるほど「we're all dodgin’」ですね。なおこれらの全部出てくる歌詞にご興味のおありの方は「The Dodger Song」でご検索ください。私にとっては非常に興味深かったことに、1941年にアメリカン・フォークの大御所ウディ・ガスリーやピート・シーガーによって結成された「アルマナック・シンガーズ(Almanac Singers)」によって歌われているこの歌の紹介記事をNetで見つけることができました。なお彼らアルマナック・シンガーズの歌はNaxosのCDに復刻されています。これを聴くとまさにアメリカン・フォークの典型のような音楽。飄々としたコミカルな味はなかなかに素晴らしいです。
コープランド版のこの歌ではやはりトマス・ハンプソンの歌ったものを(Werner)。この歌では声の力だけでなく芸達者なところも重要かと思いますので、彼のようなバリトンがピッタリです。

( 2008.08.01 藤井宏行 )


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