Varuna II (The Waters) Op.24-5 Vedic Hymns |
ヴァルナU(水) ヴェーダの詠唱 |
'Fore mine eyes, Yawning and hungry, Looms the grave. Spare me,O great Varuna. Tossed by winds, Trembling and faint, I come to thee. Spare me,O great Varuna! Mighty God! Waters o'erwhelm me Swiftly rising. Spare me,O great Varuna! Yet within, Thirst fiercely burning Gnaws my heart. Spare me,O great Varuna. |
わが目の前に 口を大きく開けた空腹の 死が突如現れる 救い給え、おお、偉大なヴァルナよ 暴風に飛ばされ 震え、気を失い われは御身の前へと至る 救い給え、おお、偉大なヴァルナよ 全能の神よ! 水がわれを圧倒する 急に嵩を増しながら 救い給え、おお、偉大なヴァルナよ なおも この身のうちで 渇きが荒々しく燃えあがり わが心臓を貪るのだ 救い給え、おお、偉大なヴァルナよ |
組曲「惑星」の作曲者ホルストは、実は古代インドにハマッていて、独学でサンスクリット語なんかも勉強していたのだそうです。で、自ら訳した古代インドの聖典リグ・ヴェーダからの1節に曲を付たのがこれです。
だいたい、ホルストの歌曲自体がイギリスの歌曲の中でも少々異彩を放っているのですが(ヴァイオリンとソプラノのための歌曲集などもあり、ヒーリングミュージックのよう)、このリグ・ヴェーダによる歌曲集はひときわ強烈です。
ピアノの研ぎ澄まされた和音の上に、語るような、詠唱するような歌、「惑星」でいうとあの神秘的な「土星」のイメージです。時々西洋風の色彩感が出てしまうのはまあご愛敬ということで。
この歌曲集、他にも何だか立派な英国風讃美歌(アンセム)になってしまった「インドラ神を賛える歌」とか結構面白い曲があって聴き飽きさせません。インド音楽を聴いた影響が云々とかライナーノートには書いてありましたが、私が聴いた限りではその雰囲気は微塵もなく、イギリス音楽をベースにひたすら無国籍の音楽を作ったという風情です。
ホルストの歌曲集は、Collinsレーベルから英国歌曲シリーズ第7弾ということで、ソプラノのGritton、テノールのLangridge、バリトンのMaltmanと3人で入れたのが手に入ります。この人の作品の不思議な味わいを堪能してみてください。なお、このリグ・ヴェーダはバリトンのMaltmanが歌っています。
尤も、この曲(Varuna)だけなら、「キャスリーン・フェリアに捧げられた歌」というChandosのアルバムでのメゾソプラノ・Finnieのゆったりとしたテンポの歌の方がはるかに印象的ですが...
(但しこのアルバムでは、ホルストの曲はこれと、同じリグ・ヴェーダから「夜明け」の2曲のみです。Chandos)
( 2000.11.22 藤井宏行 )