TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Canti del Capricono    
 
ヤギ座の歌  
    

詩: (,-) 
      

曲: シェルシ (Giacinto Scelsi,1905-1988) イタリア   歌詞言語:


歌詞はありません


イタリアの現代作曲家 ジャチント・シェルシの音楽はとことん深みにはまっていうような不思議な恐ろしさに満ちています。当時の作曲界の潮流であった十二音技法を徹底して極めていく過程で精神をわずらってしまった彼は、その病を自ら治すために、一つの音をただひたすら聴く、ということを続けました。
ピアノで「ド」の音を叩いても、そこに含まれるのは無数の倍音。それらの織り成す多彩な響きをひたすらに追いかけていく中で彼は新しい音楽的境地に達したのでしょうか。

音の微妙な綾を聴くとなれば、人間の声に勝るものはありません。彼が書いた声楽作品の代表作「山羊座の歌(Canti del Capricorno 1962-1972)は彼の作曲に多大なインスピレーションを与えた日本のミューズ・平山美智子によって私の知る限り2度録音されています。一回目は1987年頃、そして二回目は2006年、彼女が80歳を超えての録音です。いきなり冒頭ゴングがドカチャカなる中で「アアー ウウー」なんて不思議な声を上げているのを聴くとまるで恐山の巫女がトランス状態に入っているかのような感じ、その後も不気味な獣のような声あり、感情をぶつけるような激しい声あり、はたまたアニメの美少女キャラのような声もありと変幻自在の声の表現が聞かれます。人間の声を極限まで使った不思議な音楽としてはキャシー・バーベリアンの凄絶な歌唱の聴けるルチアーノ・べリオのセクエンツァVが思い起こされますが、それに勝るとも劣らないこちらも壮絶な音楽です。

こんな凄い現代音楽のミューズ・平山美智子さんですが、非常に興味深い経歴としてはあの昭和の大コメディアン・植木等の声楽の先生をされていたというものもあります。「日本一の無責任男」や「スーダラ節」のあの弾けるような強烈な歌声がこの現代音楽のミューズである彼女の力もあって生み出されていたのかも知れないと思うとなんとも面白いところです。

シェルシの音楽については、この平山さんの弟子でもあり、自身にも彼の声楽作品「ホー」などの録音のある畠中恵子さんのWEBページに非常に詳しい解説があります。読ませて頂き私も非常に参考になりました。
http://www4.ocn.ne.jp/~taraga/

( 2007.12.30 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ