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Jubal   Op.35-1  
  2 Songs
ユバル  
     2つの歌

詩: ヨセフソン (Ernst Josephson,1851-1906) スウェーデン
    Svarta Rosor och Gula  Jubal

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: スウェーデン語


Jubal såg en svana fly
över vattnet högt mot sky,
spände hastigt bågen.
Klang,ljöd strängen. Som en il
fågeln,träffad av en pil,
fött att dö på vågen.

Solen sjönk i samma stund,
purpur dränkte himlens rund,
lunden hördes susa;
och en ljuv melodisk vind
smekte sakta Jubals kind,
for att böljan krusa.

Svanen sjöng:”vad ljuvlig klang,
yngling,från ditt vapen sprang
när du grympt mig fällde-?
Sträng till sträng du binda skall,
spela så för världen all,
prisa skaparns välde!”

Sjöng så Jubal:”svana vit,
varje kväll jag vänder hit
att din död besjunga.
Ty du lade till mitt bröst
strängaspelets ljuva tröst,
sången på min tunga.”

ユバルは見た 一羽の白鳥が飛ぶのを
水の上を空高く
急いで弓を張り
ビュン と弦が鳴った まるで疾風のように
鳥は、矢に当たり
落ちて 波の上で死んだ

日が沈んだ まさにその時に
紫色が広がった 丸い大空に
木々の溜息が聞こえてきた
そして甘いメロディのような風が
やさしくユバルのほほを撫で
そして波をたてた

白鳥は歌った「なんと甘い響きが
若者よ お前の弓から奏でられたのか
お前が私をむごくも殺したときに?
弦に弦をお前は結びつけ
そして世界中に鳴り響かせて
造物主の国を讃えることができるだろう」

ユバルはこう歌った 「白いスワンよ
夜ごとに私は戻ってこよう
お前の死を歌うために
お前は私の胸の中に置いたのだ
弦の甘い慰めの響きを
そして私の口には歌を」


この曲はシベリウスの知られざる歌曲の傑作でしょうか。ほとんど無伴奏の中朗唱風に入ってくる冒頭、そしてロマンティックな旋律がピアノのトレモロと共に美しく歌われるそよ風のシーン、そしてまた白鳥の言葉が朗唱で帰ってきて、そしてベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」のテーマを思わせるメロディを奏でるピアノと掛け合うユバルの言葉の部分と、曲は最初から最後まで静かな緊張感にあふれています。詩は何かの伝承を題材にしているようですが、フィンランドの叙事詩カレワラを連想させるようなロマンティックなものです。歌曲においては意外とこういった古い伝説を思い起こさせるような作品を書かなかったシベリウスにおいては、本当に数少ないタイプの曲となりました。あまり取り上げる人は多くないですが、フィンランド出身のソプラノ、カリタ・マッティラが彼女のシベリウス歌曲集の中で最後に取り上げているのが目を惹きます。確かに彼女のようなドラマティックなソプラノによく合った曲でしょうか。

( 2007.12.18 藤井宏行 )


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