O Salutaris H.136a |
おお 救いの生贄 |
O salutaris Hostia, Quæ cæli pandis ostium: Bella premunt hostilia, Da robur,fer auxilium. Uni trinoque Domino Sit sempiterna gloria, Qui vitam sine termino Nobis donet in patria. Amen. |
おお 救いの生贄よ 天国への門を開くお方 敵が襲い来ようとも 力を与え 救いを授け給え 三位一体の唯一の主よ 永遠の栄光あれ 終わりのない生命を われらに与え給え 故郷の地で アーメン |
オネゲルの歌曲はフランス歌曲の中でも、サン・サーンスのものと並んで「作曲家は有名だけど歌曲はほとんど聴かれていない」筆頭級ではないでしょうか。でもそういうマイナーさが惜しまれる素晴らしい作品ばかりと私は感じています。
彼の歌曲の作曲時期は大きく2つに分かれていて、1924頃までの若い時期と1939〜1947の第2次世界大戦前後になります。前期の息を呑むような繊細さはドビュッシーの歌曲の影響を強く感じさせますけれどもまた捨て難く(ドビュッシーのものよりも意外なことにもっとポップな感じ)、そして後期は戦争色濃い時代もあってか、人間の深い罪業を悲しむ宗教的色彩の強い作品が目立ちます。
これはそんな中の1曲なのですけれども、全く重苦しくはありません。それもその筈、もともとこの曲は映画音楽(彼は結構たくさん映画音楽を書いていますね。Marco Poloレーベルにいろいろ録音があります)「愛のから騒ぎ」から取られたものなのだそうです。副題に「フォーレの思い出に」とあり、フォーレの宗教作品を思わせる美しいメロディがたゆたうのですが、伴奏はもっと緻密です。そんな風に複雑になって、素朴さを失ってしまうのが良いことなのか、それともこういう時代の「進歩」を素直に楽しむべきなのかいろいろと考えさせられるところですけれど。
CDはフランスのTimpaniというレーベルからオネゲルの歌曲集として出ており、46曲収録でいろいろ楽しめて良いです。この曲はメゾソプラノのBalleysによって歌われています。もっと暗い宗教的作品、「天使のパン」や「3つの詩篇」などがよりオネゲルらしい作品ですけれども、私はこういうひたすら天国的に美しい旋律の方により惹かれます。
( 1999.06.20 藤井宏行 )