星と花 |
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同じ「自然」のおん母の 御手にそだちし姉と妹 み空の花を星といひ わが世の星を花といふ かれとこれとに隔たれど にほひは同じ星と花 笑みと光を宵々に かはすもやさし花と星 されば曙雲白く み空の花のしぼむとき みよ白露のひとしずく わが世の星に涙あり |
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長命な作曲家として、服部正氏は今や最長老ということになるでしょうか。お元気であれば来年100歳を迎えられるはずです。彼は流行歌から芸術歌曲まで幅広く書いておられるようですが、調べていて非常に興味を惹かれたのがこの曲。作曲家自身の言葉によれば、「滝廉太郎-土井晩翠のコンビを追憶する気持ちで書いた。日本がヨーロッパの文明になじみつつあった明治時代に活躍した作家、土井晩翠氏への捧物」とあり、昭和29年春の作だといいます。土井晩翠が亡くなったのが昭和27年のことですから、戦前の晩翠の高名さを考えると、まだこの頃は光り輝く大詩人だったのでしょうね。
ここで取り上げられた詩は私のイメージだとあまり晩翠らしからぬセンチメンタルなもののようにも読めるのですが、賛美歌のような荘厳な曲がついて歌われるとなかなかに味わい深いものがあります。もっとも音になったものを聴いたのではなくて、楽譜を見ながらイメージを膨らませているだけなのですけれども...
( 2007.12.16 藤井宏行 )