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Lundú da Marqueza de Santos   W406  
  Modinhas e Canções
サントス侯爵夫人のルンドゥ  
     モジーニャとカンソンエス 第1集

詩: コレア (Viriato Correa,-) ブラジル
      

曲: ヴィラ=ロボス (Heitor Villa-Lobos,1887-1959) ブラジル   歌詞言語: ポルトガル語


Minha flôr idolatrada
Tudo em mim é negro e triste
Vive minh'alma arrasada Ó Titilia
Desde o dia em que partiste
Este castigo tremendo
já minh'alma não resiste,Ah!
Eu vou morrendo,morrendo
Desde o dia em que partiste

Tudo em mim é negro e triste
Vive minh'alma arrasada,Ó Titilia!
Desde o dia em que partiste
Tudo em mim é negro e triste
Este castigo tremendo,tremendo.

Minha flôr idolatrada
Tudo em mim é negro e triste
Vive minh'alma arrasada Ó Titilia
Desde o dia em que partiste
Este castigo tremendo
já minh'alma não resiste,Ah!
Eu vou morrendo,morrendo
Desde o dia em que partiste
Ó titilia

おお 私の理想の花よ
私のすべては暗く悲しい
わが魂は見捨てられて生きるのだ おおティティーリアよ
お前が去ってしまった日から
このむごい仕打ちには
わが魂はもはや耐えられぬ ああ!
私は死んでしまう 死んでしまう
お前が去ってしまった日から

私のすべては暗く悲しい
わが魂は見捨てられて生きるのだ おおティティーリアよ
お前が去ってしまった日から
私のすべては暗く悲しい
このむごい むごい仕打ちに

おお 私の理想の花よ
私のすべては暗く悲しい
わが魂は見捨てられて生きるのだ おおティティーリアよ
お前が去ってしまった日から
このむごい仕打ちには
わが魂はもはや耐えられぬ ああ!
私は死んでしまう 死んでしまう
お前が去ってしまった日から
おおティティーリアよ


ヴィラ=ロボスのこの曲を初めて聴いたときに、そのメロディの魅力に痺れてしまったことを思い出します。
冒頭のすべてを包み込むようなメロディ、そして中間部で悲しげに訴えかけるリズミカルな揺らぎ、そして再びまた冒頭の美しいメロディ。ラテンアメリカの音楽の中でも指折りの美しいものだと思います。
実際は彼の作曲ではなくて、ブラジルで昔から歌われている民謡の編曲のようですが、この歌は私は何度聴いても溜息が出ます。それもありまして苦手なスペイン語(これはポルトガル語か)ではありますが、この曲の歌詞はぜひ訳して置いておきたいと思います。
この曲のタイトル「サントス侯爵夫人のルンドゥ」というのはある意味非常に興味深いタイトルです。何でブラジルに貴族が?と意外に思われる方がおられるかも知れませんが、実は1807年、ナポレオンに侵略されたポルトガルの王室は当時領土であったブラジルに移り、1822年までここがポルトガル王国だったのでした。そして国王が帰国したのちも、皇太子がペドロ1世として即位しブラジル帝国が成立します。この帝国は1889年に無血革命によって倒れるまで続きましたから、ポルトガルよりやってきた貴族たちの一部は19世紀の間、この国でも貴族であり続けたことになります。
そしてこのサントス侯爵夫人、実在の人で本名をDomitília de Castro de Canto e Melo(1797-1867)といい、この皇帝ペドロ1世のお気に入りの愛人だったのだそうです。現在でも彼女の邸宅はサンパウロの観光名所になっているようですね。ちなみに歌詞で呼びかけられている「ティティーリア」というのは彼女の愛称だったのだそうです。

そして「ルンドゥ」というのは南アフリカからブラジルに奴隷として連れてこられた人たちの音楽をベースに生まれたポピュラーミュージックで、軽いスタイルの小唄といったところでしょうか。
王室が生まれたこの19世紀には貴族階級の間でも愛好されるようになったのだそうで、そんなところがこのタイトルの由来にもなっているのでしょう。

きちんと確認はできていないのですが、これはViriato Correaという人の舞台作品「サントス侯爵夫人」のために書かれたという記述もネットで検索しているとありました。1940年に上演されているのだそうですのでそれだとするとこれはヴィラ=ロボスの書いたオリジナルのメロディということになります。

曲はModinhas e Canções(モジーニャとカンソンエス)という名の歌曲集の第2曲。ちなみにモジーニャというのもブラジルのポップソングの一形態で、こちらはヨーロッパ起源の歌のようです。カンソンはフランス語でいうとシャンソンですから「歌」そのものですね。

( 2007.12.12 藤井宏行 )


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