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Kolybelnaya   Op.1-5  
  Pjat’ romansov
子守歌  
     5つのロマンス

詩: レールモントフ (Mikhail Yur'yevich Lermontov,1814-1841) ロシア
      Казачья колыбельная песня (1840)

曲: グレチャニノフ (Aleksandr Tikhonovich Gretchaninov,1864-1956) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Spi,mladenets moj prekrasnyj,
Bajushki-baju.
Tikho smotrit mesjats jasnyj
V kolybel’ tvoju.

Stanu skazyvat’ ja skazki,
Pesenku spoju;
Ty zh dremli,zakryvshi glazki,
Bajushki-baju.


Po kamnjam struitsja Terek,
Pleshchet mutnyj val;
Zloj chechen polzet na bereg,
Tochit svoj kinzhal;

No otets tvoj staryj voin,
Zakalen v boju:
Spi,maljutka,bud’ spokoen,
Bajushki-baju.


Sam uznaesh’,budet vremja,
Brannoe zhit’e;
Smelo vdenesh’ nogu v stremja
I voz’mesh’ ruzh’e.

Ja sedel’tse boevoe
Shelkom razosh’ju...
Spi,ditja moe rodnoe,
Bajushki-baju.


Bogatyr’ ty budesh’ s vidu
I kazak dushoj.
Provozhat’ tebja ja vyjdu -
Ty makhnesh’ rukoj...

Skol’ko gor’kikh slez ukradkoj
Ja v tu noch’ prol’ju!..
Spi,moj angel,tikho,sladko,
Bajushki-baju.


Stanu ja toskoj tomit’sja,
Bezuteshno zhdat’;
Stanu tselyj den’ molit’sja,
Po nocham gadat’;

Stanu dumat’,chto skuchaesh’
Ty v chuzhom kraju...
Spi,poka zabot ne znaesh’,
Bajushki-baju.


Dam tebe ja na dorogu
Obrazok svjatoj:
Ty ego,moljas’ Bogu,
Stav’ pered soboj;

Da,gotovjas’ v boj opasnyj,
Pomni mat’ svoju...
Spi,mladenets moj prekrasnyj,
Bajushki-baju.


おやすみ、かわいい私の赤ちゃん
ねんねんよ、ねんねんよ
お月様が明るく見下ろしているよ
あなたの揺りかごの中を

おとぎばなしをしましょうね
お歌を歌ってあげましょうね
そっとお眠り、おめめを閉じて
ねんねんよ、ねんねんよ


岩場のそばをテレク川が流れ
暗い波がしぶきを上げる
悪いチェチェン人が岸辺に身を潜め
短刀を光らせている

だけどお前の父さんは強い兵士
なれているのよ 戦いには
お眠り 赤ちゃん 静かにね
ねんねんよ、ねんねんよ


やがて分かるでしょう 時がくれば
戦いに明け暮れる暮らしになる
大胆に足を鐙に通して
銃を手に取るのよ

私は鞍を手にとって
絹の刺繍をしてあげましょう
お眠り 私のいとし子よ
ねんねんよ、ねんねんよ


英雄にあなたはなるの その姿は
そしてコサックの魂を持つでしょう
あなたと一緒に 私は外に出て
そしてあなたは手を振るでしょう

どれほどたくさんの苦い涙を そっと
私はその夜に流すのでしょう
お眠り 私の天使ちゃん 静かに 心地よく
ねんねんよ、ねんねんよ


私は憂いに満ちて苦しむでしょう
慰めもなく 待つのでしょう
一日中お祈りをしていましょう
夜には占いを

私は考えるでしょう どれほど寂しいのかを
あなたが異国の地にいて
お眠り 悩みを知らない間は
ねんねんよ、ねんねんよ


私はあなたにあげましょう 旅立つ時には
聖人さまの像を
あなたは 神さまにお祈りするとき
それを自分の前に置くのです

それから、危険な戦いの支度の時には
思い出してね あなたの母さんのことを
おやすみ、私のかわいい赤ちゃん
ねんねんよ、ねんねんよ


ロシア語の子守歌は、ねんねんよに相当する言葉baju, baju(バーユ、バーユ)がとても優しい響きで、有名なグリンカやこのグレチャニノフの子守歌をはじめとしてどれも印象的です。
グレチャニノフはロシア革命でフランス・アメリカに亡命したことが災いしてかこの子守歌と、それからロシア正教の典礼音楽を今に伝える活躍をしたこと以外ではほとんど忘れ去られてしまっていますが、作品は交響曲から室内楽曲・歌曲に至るまで幅広く、特に歌曲は250曲を数えるのだそうです。
ダルゴムイジスキー、ムソルグスキーの系譜に繋がるコテコテのロシア歌曲の作曲家として私も興味があるのですが、Marco Poloにある交響曲や室内楽曲と、それにたくさん録音がある典礼音楽以外にほとんどCDは見かけないのが残念です。
この子守歌はそれでも、たくさんの子守歌を集めたCD録音の中で取り上げられて聴くことができます。
中でも印象的なのは、アメリカのメゾソプラノ、マリリン・ホーンがクラシック・ポピュラー・民謡を取り混ぜて世界中の子守歌を録音している1枚(RCA・山田耕筰編曲の中国地方の子守歌も日本語で歌われています)にさりげなく紛れ込んでいるものです。
子守歌の世界巡りもここまで徹底してやると素晴らしく、ロシアの曲はこれだけですが、編曲も含めなかなか良いです。尤も私はこの曲、こういった世界の子守歌集のようなのでしか聴いたことがないので、編曲でない原曲(おそらくピアノ伴奏でしょう)で一度は聴いてみたいのも確かですが。

(2003.08.17)

この詩、冒頭だけでは気が付きませんでしたが、日本でもロシア民謡として良く知られている「コサックの子守歌」と同じ詩でした。グレチャニノフの優しいメロディと、後半の戦闘民族である彼らの熱い情念とがかなりミスマッチなので2番以降はほとんど歌われないということなのかも知れません。
一応レールモントフの原詩に訳をつけて見ましたがこの通り歌われることはたぶんないと思います。

レールモントフはコーカサスに何度も赴き、そこの光景や人々を歌った詩をたくさん残しています。これもそんな中のひとつでしょう。コーカサスを舞台とした詩がたくさん書かれた1840年の作品。実際この詩でも歌われているテレク川のほとりで若いコサック女の歌う子守歌を聴いて書いた詩なのだそうです。
往年の名歌手の録音があったり、Bridge Recordsにあるクレチャニノフ歌曲集のCDでもGeorgine Resick のソプラノでとても美しく歌われていたり、探すと結構聴ける機会の多いのは意外でした。

( 2014.09.19 藤井宏行 )


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