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Ballade à la lune    
 
月に捧げるバラード  
    

詩: ミュッセ (Louis Charles Alfred de Musset,1810-1857) フランス
    Premières poésies  Ballade à la lune

曲: オッフェンバック (Jacques Offenbach,1819-1880) フランス   歌詞言語: フランス語


Voyez,dans la nuit brune,
Sur le clocher jauni,
La lune,
Comme un point sur un i.

Lune,quel esprit sombre
Promène au bout d'un fil,
Dans l'ombre,
Ta face et ton profil?

Qui t’avait borgnée
L’autre nuit? T’ étais-tu
Cogné e
Á Quelque arbre pointu?

Lune,en notre mémoire,
De tes belles amours
L'histoire
T'embellira toujours.

T'aimera le vieux pâtre,
Seul,tandis qu’à ton front
D’albâtre
Ses dogues aboieront.

T'aimera le pilote
Dans son grand bâtiment,
Qui flotte,
Sous le clair firmament!

Et la fillette preste
Qui passe le Buisson,
Pied leste,
En chantant sa chanson.

Et qu'il vente ou qu'il neige,
Moi-même,chaque soir,
Que fais-je,
Venant ici m'asseoir?

Je viens voir à la brune,
Sur le clocher jauni,
La lune la lune
Comme un point sur un i.

ご覧よ、こげ茶色の夜闇の中
黄ばんだ鐘楼の上に
月が出てる
まるでiの字の上の点みたいだ

月よ、どんな夜の妖精が
糸の切れ端で操っているのか
この闇の中
お前の正面顔や横顔を

誰のせいで片目をつぶしたんだい
いつぞやの晩には?お前が自分で
ぶつけたのか
どこぞの尖った木の枝にでも

月よ、ぼくたちの記憶の中には
お前を愛した美しき者たちの
歴史があって
お前を永遠に輝かせているのだ

お前を愛したのは老いた羊飼いだ
ひとりぼっちで、お前の顔
石膏のようなその顔に
番犬が吠え掛かるとき

お前を愛したのは船乗りだ
大きな船の上で
漂いながら
きらめく星空の下

そして敏捷な小娘もだ
茂みを通り抜けてゆく
軽やかな足取りで
歌を歌いながら

そして風が吹こうと雪が降ろうと
ぼく自身も、どんな夕べでも
何をしにくるのかだって
ここに来て座って

見に行くのさ、こげ茶色の夜闇の中
黄ばんだ鐘楼の上に
月が出てるのを
まるでiの字の上の点みたいな


「天国と地獄(地獄のオルフェ)」や「ぺリコール」、「青髭」などパリのオペレッタで活躍したドイツ出身の作曲家オッフェンバックにも、数は少ないながらも素敵な歌曲作品があります。ラ・フォンテーヌの寓話に付けた音楽などは、まるでオペレッタの一節のように聴こえてなかなか楽しいのでありますが、ここではもとはオペレッタのアリアか何かでありながらのちに歌曲として独立したこの作品をご紹介致します。

このミュッセの詩にはラロも曲をつけていて聴き比べができるのですが、意外なことにおどけて楽しいのはラロの曲の方で、こちらは何と言いますかしみじみと聴かせる美しい歌になっています。ユーモラスなところは目一杯抑えて(実際詩でもおどけた部分はかなりカットしてしまっています。ラロの取り上げた部分と比べてみてください)、何とも格調のある歌です。もともとはこの曲、何かのオペレッタのアリアとして書かれたようですが、今は歌曲として取り上げられるようになりました。カミーユ・モラーヌがEratoに「ミュッセの詩による歌曲集」というタイトルで録音した中にも収録されており、その格調高さをじっくりと味わうことができます。

( 2007.11.24 藤井宏行 )


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