TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Why Can’t The English?    
  My Fair Lady
なぜできぬのだ 英国人は?  
     ミュージカル「マイ・フェア・レディ」

詩: ラーナー (Alan Jay Lerner,1918-1986) アメリカ
      

曲: ロウ (Frederick Loewe,1904-1988) アメリカ   歌詞言語: 英語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
[ヒギンズ]
見たまえ あの娘 囚人だ スラム街の
ひどいものだ 彼女が発するすべての音節が
当然 彼女は連行されて絞首刑となるべきだ
冷酷な殺人鬼として 英語の発音の

[イライザ]
アウウウ!

[ヒギンズ]
アウウウ!
神よ なんというノイズだ!
これこそが英国国民が
呼んでいるものなのだ 初等教育と

[ピカリング]
まあまあ 閣下 あなたは悪い例を挙げているようですぞ

[ヒギンズ]
私がかね?
お聞きなさい ソーホー広場にいる連中を
落としているぞ「h」の音をどこでも
話しておるのだ 英語をめいめい好き勝手に

君 学校に行ったのかね?

[男]
俺を馬鹿扱いするのかよ?


[ヒギンズ]
誰もこの者に「take」と教えてはいない
「tike」の代わりに!

お聞きなさい ヨークシャーのはもっと酷い
お聞きなさい コーニッシュでの会話を
下手なコーラスを聞くほうがましだ
ニワトリどもがガヤガヤ納屋で言っているのが
ちょうどあんな感じだ

[イライザ]
バカ言え!

[ヒギンズ]
バカ言え 失礼 それはどんな種類の言葉なのかね?

この「アウウウ」や「バカ言え」が彼女をこの身分に縛り付けている
この惨めな服や汚れた顔のためではありませんぞ

なぜできないのだ 英国人は教えることが 子供たちに話し方を?
言葉遣いで階級を見分けようというのは 今や
時代錯誤となっておる
もし貴方が彼女のように話したなら 閣下
あなたの話し方ではなく
貴方も花を売っているかも知れませんぞ 同じように!

[ピカリング]
何をおっしゃいますか!

[ヒギンズ]
英国人の話し方は絶対的に彼その階級を明示する
話しだした瞬間 他の身分の英国人は彼を軽蔑するのだ
ただひとつのの共通言語 私は永遠に出来ないと恐れてはいるが
おお なぜできぬのだ 英国人は学習することが
良い模範を示すことを この連中に
その英語が耳を腐らすような酷さの?
スコッチやアイリッシュに至っては涙が出そうなほどだ
ところによっては英語が完全に消えている

アメリカではもう長年英語は使われておらぬ!

なぜできぬのだ 英国人は教えることが 子供たちに話し方を?
ノルウェー人は学ぶ ノルウェー語を
ギリシャ人は教えられておる 自らのギリシャ語を
フランスではすべてのフランス人が知っているというに
自分の言語を「A」から「Zed」まで

フランス人は決して気にせぬが 自分が何を言っているのかは
正しく発音している限り

アラビア人はアラビア語を学ぶ 夏の稲妻の速さで
ヘブライ人はそれを後から前に学ぶ
これは実に驚くべきことだ
しかし 適切な英語を使用するとフリークと見なされるのだ

なぜできぬ 英国人は
なぜできぬ 英国人は
話し方を学ぶことが?

(詞は大意です)

マイ・フェア・レディ 主演2人 ジュリー・アンドリュースとレックス・ハリソンのキャラがあまりにぴったりとはまり過ぎていて、その後の数多のリメイクは私にはどうもしっくりきません。1956年 この2人によるオリジナル・ブロードウェイキャストの録音を聴きながら自分のイメージにピッタリくるこの作品の訳詞を試みてみることにしました。著作権法的には翻訳するのにも許諾が必要なので怒られるかも知れませんが、オリジナルキャストのレコーディングの日本語対訳は現在手に入りにくいかと思いますし、曲への理解を深めるためにはこんなのもあっても良いかと。Youtubeには(合法か違法かは不明ですが)、この音盤の全曲がいくつもアップされていますので(あるいはNaxos Music Libraryなどにある音源を合法的に取得されて聴いて見られても良いかと。
歌詞の翻訳は色々最近サイトが立ち上がっていますが、うまくビジネスモデルが作れるとまだまだ飛躍的に向上が望めそうな気がしています。


ロンドンのコヴェントガーデンオペラハウスの前の広場、貧しい花売り娘イライザの言葉を物陰でメモしている一人の紳士、高名な言語学者のヒギンズ教授です。たまたま居合わせた老紳士に英国人の言葉の乱れをこんな風な歌で慨嘆して見せます。英国上流階級の男性らしく皮肉たっぷりに。
たまたま話しかけていた老紳士がインドから彼に会いにやってきた同じ分野の研究者ピカリング大佐と分かり、言語学談義で一時盛り上がります。
話の勢いでつい、自分の力をもってすればあんなみすぼらしい花売り娘でも半年で貴婦人のように変えて見せると豪語します。それを聞いているイライザ...

この曲で思い出すのは、アメリカNBCのコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」で1984年に同じ局のニュースショーのアンカーを務めていたエドウィン・ニューマンがゲストで出演し、このミュージカルのパロディを実に絶妙にやっていたことです。
リタイアしたばかりのニューマンが、バーで飲みながら、最近のアンカーが求められるのはルックスだけという風潮にこんなぼやきをします。はじめの訥々とした語りがこの「マイ・フェア・レディ」のメロディになるところが最初の聴きもの...

「なぜできぬのだ テレビ局は教えることが アンカ―に話し方を
 髪型のスタイルがどうとか シックなスーツを着ろとか言う代わりに?
 彼らはまるでファッションモデルだ マーク・スピッツのように見えるぞ
 話し方と言えばまるでベルリッツで英語を学んだかのようだ
 彼らはニュースを読む 足を口に咥えて(無神経に)
 舌を頬に入れる(皮肉を言う)かわりに
 なぜできぬのだ アンカ―は話し方を学ぶことが? 

ここで、一緒に飲んでいたトム・シュナイダー(演:ジョー・ピスコポ)に、ミュージカルでのヒギンズ教授と同じように、「もし私に良い声の、そして良い髪型の男を任せてくれれば、立派なアンカーに変えて見せる」と豪語し、シュナイダーから、あそこの若いバーテンダーはどうかと持ち掛けられます。もっと見込みのある奴を見たこともあるのだがというニューマンですが、まあともかくやってみるかと賭け成立。向こうに居るバーテンダー(演:ブラッド・ホール)に声をかけ、誰でもをアンカーにして見せるというニューマンとの賭けに協力してくれるかを聞きます。バーテンダーは
「うん それは難しいことじゃないですよ ぼくはニュースを読んだことがありますからね『サタデー・ナイト・ライブ』で こんにちは ブラッド・ホールです」と返します。
こりゃあかんわと賭けを降りようと(Bet's off)するニューマンを宥めて会話を続けさせるシュナイダー。
ニューマンの「君はニュース番組のアンカーになりたいのかね?」という問いに対して「この世の何よりも」と答えるバーテンダー。
ミュージカルの次のナンバー「Wouldn't It Be Lovely」のメロディに乗せてこんな野望を歌います。

ぼくが欲しいのはどこかの局のデスク
30分のネットワーク番組
誰かが来てスプレーしてくれるんだ ぼくの髪を
うー ぼくってニュース価値ありかな?

またまたあきれて賭けをおりようとするニューマンですが、とにかくにもトレーニングは始めることになります。続きは「The Rain In Spain」の項で。

https://www.youtube.com/watch?v=yupH8tszlYs

SNLでは過去の大量のコンテンツを無料で公開しており、これもそのひとつです。
このミュージカルを愛するすべての人に見て頂きたいすてきなパロディです。

( 2021.10.09 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ