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Till Frigga   Op.13-6  
  7 Laulut
フリッガに  
     7つの歌

詩: ルーネベリ (Johan Ludvig Runeberg,1804-1877) フィンランド
    Lyriska dikter I  24 Till Frigga

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: スウェーデン語


Mig ej lockar din skatt,Afrikans gyllne flod!
Ej din pärla jag sökt,strålande Ocean!
Friggas hjärta mig lockar,
Röjt i tårade ögats dagg.

O,hur ringa för mig vore en gränslös värld,
Med dess solar af guld,med dess demanters sken,
Mot den värld,jag med henne
Hänryckt gömmer i sluten famn!

Vad af stoftet hon lånt,vad hon av himlen har,
Kan jag skilja det mer,än på vår sommarsky.
Vad blott aftonen målar
Eller morgonens blomsterhand?

Tanke svindlar och syn,när i dess blick jag ser,
Liksom såge jag ned i ett omätligt djup,
Tills jag spritter ur dvalan
Vid en kyss af dess purpurmun.

Säg,var fostrades du,leende ängel,säg!
Tills du sänkte dig ned,och åt ditt rosentjäll
Gav gestalten av Frigga,
Att försköna min vandring här.

Mulnar banan ibland,skjuter ett törne fram,
Suckar anden engång,tryckt av sin bojas ok,
O,hur saligt att ila
I den älskades armar då!

Jorden smeker min fot ljuv som en vårvind där
Livets fjättrande tyngd lätt som en bubbla känns,
Och av svällande pulsar
Vaggas själen i gudars ro.

私にはお前の宝など魅力的でないぞ アフリカの黄金の川よ!
お前の真珠など探し求めなかったぞ 輝く海よ!
フリッガの心だけが私を誘うのだ
露の涙の中から現れた心が

おお、なんとつまらないのだ 私にとってこの広い世界さえ
この黄金の太陽と 輝くダイヤモンドをもってしても
この別世界、私と彼女とが
身を隠しながら熱い抱擁をかわす世界に比べたら

彼女がこの世でかりそめに持つものと、天より授かっているものとを
これ以上どうやって区別できるというのか、夏の空に
夕暮れが描き出したものや、
朝がくれた両手いっぱいの花を区別できるほどに?

私の思いは眩む そして目も、彼女の瞳に見入るときには
まるでそれは底知れぬ穴を覗き込むようなもの
私が恍惚から目覚めるまで
彼女の紫色のくちびるのくちづけによって

話してくれ、どこでお前は育ったのかを、微笑む天使よ、話して!
お前が地上に降りて、そのバラ色の魂に
フリッガという実体を与え
わがさすらう人生を美しいものにしてくれる前には

道はしばしば陰鬱だ 茨が突き出している
溜息が魂より出でる あまりの足枷の重さに
おお、何と素晴らしいのだ こうして急ぎ行くのは
最愛の人の腕の中へと

大地はわが足を優しく撫でる 春のそよ風のように優しく
人生の枷の重さも泡のように軽く思える
そして脈打つ鼓動によって
魂は神の安らぎへと誘われるのだ


これはルネベルイの詩につけた歌曲集Op.13においても不思議な感じの歌です。詞を見ると熱烈な恋の歌のはずなのですが決して明るくなく、アフリカが舞台のようですが音楽はたいへんに寒々としています。Deccaの歌曲全集の解説で菅野浩和氏がシベリウスの歌曲に関する研究書を書いたアストラ・デズモンドの言葉を引用して、「この曲には北欧の神話・サガ様式が認められる」と書かれています。そのサガ様式というのがどういうものなのか私にはわからないのですけれども、聴いていますと確かに古代の異教の祭典の音楽のようにも聴こえますので、そんな感じの神話の口誦のことを言っているのかも知れません。

トム・クラウゼやヨルマ・ヒュンニネンのたいへんにリリカルなバリトンで聴いたときはこの曲の鮮烈さは良く分からなかったのですが、キム・ボルイのシベリウス歌曲集の中で、この滋味溢れるバスの歌で聴いたらけっこう痺れました。この人も比較的リリカルな声のバス歌手なのですがなんといいますか風格があります。何だかとても凄い曲のようにも思えてきました。

( 2007.11.17 藤井宏行 )


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