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Drömmen   Op.13-5  
  7 Laulut
夢  
     7つの歌

詩: ルーネベリ (Johan Ludvig Runeberg,1804-1877) フィンランド
    Lyriska dikter II 11 Drömmen

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: スウェーデン語


Tröttad lade jag mig ned på bädden,
Att i sömnen glömma sorg och saknad,
Men en dröm sig smög till hufvudgärden,
Hviskande uti mitt öra detta:
“Vakna,hon är här,den sköna flickan,
 Blicka upp,att hennes kyss emotta!”
Och jag slår med glädje upp mitt öga.
Hvar är drömmen? Som en rök försvunnen.
Hvar är flickan? Bortom land och sjöar.
Hvar är kyssen? Ack,blott i min längtan.

疲れ果てて私は体をベッドに横たえた
眠りの中で悲しみと喪失感を忘れようと
けれども夢は私の枕元へ忍び寄ってきて
私の耳にこうささやいた
「目覚めるんだ、あの娘はここだよ、あの美しい娘は
 目をあけるんだ、彼女のキスを受けようよ!」
そこで私は喜びと共に目を開ける
どこに夢はいるのか?煙のように消えてしまった
どこにあの娘はいるのか?大地と海の向こうに
どこにくちづけはあるのか? ああ、それは私の憧れの中に


最近復刻されたフィンランドの名バス歌手、キム・ボルイのシベリウス歌曲(DG)は大変すばらしい内容です。北欧の歌手の歌うシベリウス歌曲というとビョルリンクやフラグスタート、ニルソンにゲッダとかなりダイナミックなものが多く、力と貫禄で押し切るというスタイルが多いような気がするのですが(そしてそれはそれですばらしいのですが)、そうでない色合いが強い歌もシベリウスにはたくさんあって、そういう歌にはちょっと力と貫禄は合わないようです。またヒュンニネンやフォン=オッターなどの緻密な歌唱も、シベリウスの歌曲のある側面は見事に表現してくれているのですが、これまた一部の泥臭い作品に対しては洗練されすぎているような気がしてどうもしっくりこないのです。
フィンランド民謡をルーツに持つかのようなそういった素朴な歌は、彼の歌曲の中でも数少ないフィンランド語につけた歌曲に顕著に現れているような気がします。現在一生懸命訳す努力はしているのですがあまりに私の手にあまり、まだ1曲も満足のいく訳ができてはいないのですが、代わりにスウェーデン語の見事な歌の中からいくつか取り上げて行ければと思っています。これはフィンランドの大詩人、ヨハン・ルネベリの詩ばかり取り上げて曲をつけた作品13の歌曲集の第5曲です。夢の中で恋人を見かけ、喜んで目を開けるとひとりぼっち。ハイネの「詩人の恋」にでもありそうなシチュエーションですが、こちらの方が感情にも抑制が効いていて、シベリウスの音楽には良く合っているように思います。実際この歌曲集でも比較的良く取り上げられる作品で、キム・ボルイだけでなく色々な人の歌を耳にすることができます。

( 2007.11.17 藤井宏行 )


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