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茶目子の一日(下)    
 
 
    

詩: 佐々紅華 (Sassa Kouka,1886-1961) 日本
      

曲: 佐々紅華 (Sassa Kouka,1886-1961) 日本   歌詞言語: 日本語



「まあ苦しいほど食べなくってもいいじゃありませんか
さあ食休みをしたら早く学校へいらっしゃい」

茶目子
それじゃ母さま 行ってまいります

今日は時間が早いから 電車に乗らずに歩きましょう
広い通りはにぎやかで いいけどうっかり歩けない
自動車ブッブッブッおお恐い やっぱり足袋屋の横丁を
まがって近道行きましょう あれあれポチがついて来た
此処からお帰んなさい ポチ ポチ ポチ

先生
「ええ皆さん、これから算術をやります。
茶目子さんこの問題を考えて御覧なさい

一本三銭の鉛筆を三本買ったら
いくらになりますか」

茶目子
三三が九ですから みんなで九銭になります

先生
「それはよく出来た 今度は読本をやりましょう
 茶目子さん 釜盗人を読んでごらんなさい」

茶目子
ハイ

この釜はお前のものに相違はあるまい さっそく持って帰れ
と申しました
いざりは大層喜んで 其の釜を頭にかぶって両手をついて
いざりだしました

役人は後ろから声をかけて
こら待ていざり 釜盗人は其方にきまったぞ

と言って

下役共にいい付けて 縛らせました

先生
「ああ大層よく出来ました 今日はこれでおしまいにします」

茶目子
母様ただいま 今日はネ 学校で読本がたいそう
よく出来たって褒められたのよ


「そう、それはようござんしたネ。」

茶目子
其のごほうびに活動へ連れてってちょうだいな


「マアずるい茶目子さんネ
 それぢゃ晩に行きましょうネ」

茶目子
活動写真は面白い いくら見てもまだ見たい

弁士
「エエだまし討ちとは卑怯のしれもの よらば斬るぞ
腰をひねれば紫電一閃、
闇にひらめく 剣戟のひびき」

茶目子
今度の日曜 また来よう



下は手元に歌詞がなかったのでネット上の歌詞を参照しながらYoutubeのSP再生動画で聞き取りです。先生と活動弁士役で二村定一が出てきていますね。なかなか味のある好演です。読本の「釜盗人」のところ、大岡裁きの有名な話なのですが、いざり(足の不自由な人)が現在では差別用語になるということで今ではこの後半が取り上げにくくなった(そればかりでなく足袋屋とか活動とか現代でイメージしにくくなっているのも一因でしょうか)ということもあろうかと思いました。

( 2021.06.05 藤井宏行 )


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