風に寄せて |
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さうして小川のせせらぎは 風がゐるから あんなにたのしく さざめいてゐる あの水面のちひさいかげのきらめきは みんな風のそよぎばかり...... 小川はものをおし流す 藁屑を 草の葉っぱを 古靴を あれは風がながれをおして行くからだ 水はとまらない そして 風はとまらない 水はふいに身をねじる 風はしばらく水を離れる しかしいつまでも川の上に 風は ながれとすれずれに ひとつ語らいをくりかえす 長いながい一日 薄明から薄明へ 夢と晝の間に 風は水と 水の翼と 風の瞼と 甘い囁きをとりかはす あれはもう叫ぼうとは思はない 流れて行くのだ |
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( 2021.05.29 藤井宏行 )