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Simple Gifts    
 
シンプル ギフト  
    

詩: ブラケット (Elder Joseph Brackett,1797-1882) アメリカ
      

曲: ブラケット (Elder Joseph Brackett,1797-1882) アメリカ   歌詞言語: 英語


Tis the gift to be simple,
'tis the gift to be free,
'Tis the gift to come down where we ought to be,
And when we find ourselves in the place just right,
'Twill be in the valley of love and delight.

When true simplicity is gain'd,
To bow and to bend we shan't be asham'd,
To turn,turn will be our delight,
Till by turning,turning we come round right.


つつましくあることは 天からの贈り物
とらわれのないことも 天からの贈り物
自分たちのいるべき場所に行くことができるのも 天からの贈り物
そしてまさにその正しき場所に自らがあることがわかれば
そここそが愛と喜びの谷間となるのだ

ほんとうのつつましさを身に付けられれば
頭を下げるのも 腰を低くするのも恥ずかしくなくなり
変わることも 変わることも我らが喜びとなるであろう
変わるのだ 変わるのだ 我らが正しき場所にたどり着くまで


アーロン・コープランドのバレエ音楽(厳密にいうとマーサ・グラハム舞踊団のモダンダンスのための音楽でバレエではありませんが)「アパラチアの春」で印象的に使われているメロディ「Simple Gifts」は、まさにそのアパラチアに多く住むキリスト教ピューリタンの中でもとりわけ禁欲的な生き方で知られるシェーカー派の聖歌として書かれたものです。コープランドはのちに歌曲集「古いアメリカの歌」第1集の4曲目としても再度この曲を取り上げましたので、今では独唱として、あるいは合唱曲として広く歌われるようになりました。
英語版のWikipediaに詳しい記述がありましたが、この曲を作ったのはエルダー・ジョゼフ・ブラケット(Elder Joseph Brackett 1797-1882)という聖職者。1848年のことだそうです。そしてコープランドのようなクラシック音楽畑の人ばかりでなくポピュラーミュージックとしてもよく取り上げられて、今やアメリカを代表するメロディーのひとつといっても過言ではないくらいの普遍性を得ているようです。

シェーカー教徒は普段は男女も分かれて暮らし、また酒などもたしなまない彼らは唯一礼拝のときだけは男女が同席して踊りや歌を楽しむのだといいます。そんな礼拝のための歌としてこれも作られたのでしょう。
踊りの音楽としても使えるように「To bow」や「To bend」、あるいは「Turn」などの動きを表す言葉も使われています。上の訳では宗教的な意味合いを前面に出していますが、リフレイン部分はこんな感じにも訳せるでしょうか。


  つつましくあればこそ
  お辞儀、お辞儀 恥ずかしがらずに
  まわれ まわれ 楽しく回れ
  まわり まわって ひとめぐり

Wikipediaでもこのリフレインの部分はこんな風にダンスのインストラクションにもなっているという説明をしていました。男女がふたりで向かい合ってお辞儀をしたりぐるっと回ったりするイメージでしょう。これぞまさにフォークダンスの詞です。普段禁欲的に暮らしているだけに、こんな素朴なダンス音楽でも日本のスケベオヤジが好む酒場のチークダンスくらいのエキサイトはきっと可能なのでしょうね。


歌詞の訳や解説の作成に関しては英語版のWikipediaの他に翻訳家の光野多恵子さんのブログの記事を参考にさせていただきました。2005年の9月より6回にわたってこの歌の背景や訳詞について非常に詳細かつ面白い記事を書いて下さっています。これを読まなければ私はたぶんとんでもない誤訳をご紹介することになっていたでしょう。日本語でこれほど詳細な解説を目にすることができるとは思いませんでした。シェーカーのことなどはここを大いに参考にさせて頂きました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

   mitsuno.air-nifty.com/tmitsuno/cat4597839/index.html

( 2007.10.21 藤井宏行 )


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