TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Le tombeau des naïades   L 90  
  Chansons de Bilitis
ナイアードの墓  
     ビリティスの歌

詩: ルイス (Pierre Louys,1870-1925) フランス
    Les Chansons de Bilitis - 1.Bucoliques en Pamphylie 46 Le tombeau des naïades

曲: ドビュッシー (Claude Achille Debussy,1862-1918) フランス   歌詞言語: フランス語


Le long du bois couvert de givre,
je marchais; mes cheveux devant ma bouche
se fleurissaient de petit glaçons,
et mes sandales étaient lourdes
de neige fangeuse et tassée.

Il me dit: “Que cherches-tu? “
“ Je suis la trace du satyre.
Ses petits pas fourchus alternent
comme des trous dans un manteau blanc.”
Il me dit: “Les satyres sont morts.”

“Les satyres et les nymphes aussi.
Depuis trente ans il n'a pas fait
un hiver aussi terrible.
La trace que tu vois est celle d'un bouc.
Mais restons ici,où est leur tombeau.”

Et avec le fer de sa houe il cassa la glace
de la source où jadis riaient les naïades.
Il prenait de grands morceaux froids,
et les soulevant vers le ciel pâle,
il regardait au travers.

あたしは霜に覆われた森を歩いていた
口にかかるあたしの髪は
花のように見える小さなつららを集めてた
あたしのサンダルはとても重たい
泥と固まった雪のせいで

あの人は言ったわ「何を探しているの?」って
「サテュロスの足跡を追いかけているの
小さな足跡が交互についてるわ
白いマントに開いた穴みたいに」
あの人は言った「サデュロスは死んだよ」

「サテュロスもニンフもね。
この30年間でこんなになったことはない
今年の冬の厳しさほどには
きみの見ている足跡は牡山羊のものさ
でもここに居よう、彼らのお墓があるから」

それからあの人は鉄の鍬で氷を割った
かつてナイアードたちが笑いあっていた泉の
あの人は大きな冷たい塊を手に取って
蒼ざめた空に向かって持ち上げた
それからその中を覗き込んだのよ


第1曲「パンの笛」や第2曲「髪」では少女のデートにしては少々濃密すぎる情景を描いておりましたけれども、この第3曲ではPTAもあまりうるさく言わないようなすがすがしい少年少女のデートの光景です。とは言いながらも何とはなしにこの真冬の情景、恋の終わりを予感させるような非常に寂しさを感じさせる曲です。執拗に繰り返されるピアノ伴奏の分散和音はまるで恋の終わりに揺れ動く感情の高ぶりを表しているかのよう。でも恋することの不安がこれで終わりになることの安堵感のようなものも音楽の切れ目にはフッと浮かびだして、とても印象深い音楽になっています。

ナイアードというのはギリシャ神話に出てくる水の精。Googleで画像検索しましたら大量の水着の女性の写真と共に、乙女の姿をした人魚の絵がたくさん引っかかって来ましたので、少なくともフランスではリトル・マーメイドみたいな妖精なのでしょう。サテュロスというのはヤギの姿をした山の精なのだそうです。みんな死んでしまった。この冬の寒さで。彼の心と一緒に...

( 2007.10.05 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ