Soupir M.64 Trois Poèmes de Stéphane Mallarmé |
溜息 ステファヌ・マラルメの3つの詩 |
Mon âme vers ton front où rêve,ô calme soeur, Un automne jonché de taches de rousseur, Et vers le ciel errant de ton oeil angélique Monte,comme dans un jardin mélancolique, Fidèle,un blanc jet d'eau soupire vers l'Azur! - Vers l'Azur attendri d'Octobre pâle et pur Qui mire aux grands bassins sa langueur infinie Et laisse,sur l'eau morte où la fauve agonie Des feuilles erre au vent et creuse un froid sillon, Se traîner le soleil jaune d'un long rayon. |
ぼくの魂は夢見る君の顔へと、おお静かな妹よ そばかすでいっぱいの秋に そして天使のような君の瞳の漂う空へと 向かっていく、まるで憂いに満ちた庭の中で 絶え間なく、白い噴水が青空に向かって溜息をつくように -青空に向かって、青白く澄んだ十月の穏やかさは 大きな湖面に限りない憂鬱さを映し出し そして漂わせる、死んだような水の上に褐色の苦悩を 枯葉の苦悩は風に乗って 冷たい轍を描く 黄色い太陽の長く伸びた光がその上をなぞっていく |
ラヴェルの声楽作品の最高傑作との評もある「ステファヌ・マラルメの3つの詩」(1913)、恐ろしく難解で鮮烈な言葉を紡いだステファン・マラルメの詩に、木管とピアノ、弦楽4重奏の伴奏が付いた作品です。同じく室内楽伴奏の「マダガスカル島民の歌」に比べてもその晦渋さは際立っていて、一度や二度くらい聴いただけではその魅力を理解できないハイレベルの音楽ではないかと思いますが、こんな作品こそ詩をじっくりと読み込み、フランス語の響きに浸りながら音楽を味わうことで見えてくるものもあるのではないでしょうか。私もまだこの歌曲集の本当の魅力を理解できているとはとても言えませんので、付け焼刃の勉強しかしていないフランス語であるにも関わらず無謀にも日本語訳を試み、そして私なりに詩と音楽を味わってみました。非常にお粗末で申し訳ございませんがご覧頂こうと思います。
この歌曲集第1曲目の「溜息」と第2曲目の「空しい願い」の詩は面白いことに、ドビュッシーもほとんど同じ時期に歌曲集「ステファヌ・マラルメの3つの詩」の第1・2曲に取り上げていて、その偶然には驚かされました。
両者がこれらの詩にどのようなイメージを得たのか?を聴き比べてみるのも面白いのではないでしょうか。
第1曲目の「溜息」、これは晩秋のイメージですね。空は抜けるように青白く、そして湖の上には褐色の枯葉が水面を埋め尽くすように漂っています。風が吹いて湖面の枯葉が割れて轍(わだち)のようになり、その上を夕暮れ近い太陽の黄色い光が射している...
とてつもなく美しい秋の情景描写だと思います。そしてまた滲み出てくる寂しさも何ともやるせない感じ。
音楽もフルートのソロと掛け合いながらひたすら静かに溜息をつき、そして伴奏の厚くなる後半部ではこれからやってくるもっと寂しい季節を予感するかのような流れ。
全体に静謐なこの歌曲集においても研ぎ澄まされた静謐さは飛び抜けて印象的です。
( 2007.09.21 藤井宏行 )