Och när jag var en liten smådräng Op.60-2 2 Songs from Twelfth Night |
おいらがちっちゃいガキだったときにゃ シェイクスピアの「十二夜」による2つの歌 |
Och när jag var en liten smådräng, Hållilå,uti storm och regn, Då var mig en bädd icke mer än en säng, Förty regnet det regnar var eviga dag. Men när jag som karl börja' leva helt stort, Hållilå,uti storm och regn, Då stängde envar för tjuven sin port, Förty regnet det regnar var eviga dag. Och ack då jag fick mig etta äkta viv, Hållilå,uti storm och regn, Då lade jag af mitt rumlande liv, Förty regnet det regnar var eviga dag. Men när som jag tog mig en lur så söt, Hållilå,uti storm och regn, Då hade jag druckit mig full som ett nöt, Förty regnet det regnar var eviga dag. En god stund redan vår värld hållit ut, Hållilå,uti storm och regn, Men det är detsamma; vårt spel är slut. Gå det bra,ska vi spela var eviga dag. |
おいらがちっちゃいガキだったときにゃ ホイリラ 嵐と雨ばかり ベッドはただの寝床以上のものだったよ だって雨が雨降りさ 毎日毎日 だがおいらが一人前の暮らしを始めたときにゃ ホイリラ 嵐と雨ばかり 泥棒しようもんならたちまち門から締め出しよ だって雨が雨降りさ 毎日毎日 それから ああ おいらがカカァを貰ったときにゃ ホイリラ 嵐と雨ばかり しらふの暮らしを送らにゃならなくなった だって雨が雨降りさ 毎日毎日 だがなあ、可愛い女に騙されちまって ホイリラ 嵐と雨ばかり 大酒呑まされ 元の木阿弥 だって雨が雨降りさ 毎日毎日 ずっと長いことこの世はこんな具合だったさ ホイリラ 嵐と雨ばかり だがみんな同じこと お芝居はおしまい いい塩梅に おいら達ゃ演ずるのさ 毎日毎日 |
シェイクスピアの喜劇「十二夜」の幕切れも、道化フェステが歌う人生のほろ苦さを感じさせる歌で締められます。これもまた古今東西の作曲家によって音楽が付けられており、非常にしんみりとしたものから陽気に騒ぐようなものまで多彩な表情を楽しむことができます。このロマンティックなコメディをどういう形で締めくくるかでかなり演出や解釈に幅があるということなのでしょうけれども、ここでシベリウスが付けた音楽はどちらかと言えば後者の明るいスタイル。たいへん耳に優しい音楽として楽しめます。また英語の原詞ではなく、スウェーデン語の詞に付けられていますのでかなり内容は異なっています。ちゃんと訳せているかどうかははなはだ心もとないところはありますが、できるだけ原詞のスウェーデン語に合わせて訳を試みました。
その際Deccaの歌曲全集CDの大束省三氏の訳をかなり参考にさせて頂きましたが、ちょっとここはどうなのかな、と意味が良く分からなかったところはかなり独自の解釈をしています。もっともスウェーデン語はほとんど単語レベルでしか理解できておりませんので、私の方がとんでもない勘違いをしている公算は大です。ご了承ください。
第一節の「ベッドは寝床以上のもの」というのはたぶん、赤ん坊にとってはベッドが生活のすべてだったということを言っているのだと思います。第2節はシェイクスピアの原詩ともあまり差はなさそうですね。第3・4節はかなり英語の原詩とは異なっていますが、恐らくこんなもので良いかとは思っています。
「雨が雨降りさ」というのはとても変な言い回しですが、何となくこのユーモラスな音楽を聴きながら「Förty regnet det regnar」を解釈するとこんな感じが合っていそうなのでこうしました。またシェイクスピアの原詩では「With hey,ho」といい調子だったところのスウェーデン語版のHållilåは耳で聴くと「ホイリラ」と聴こえましたのでそう訳しています。
この曲はオリジナルのギター伴奏で歌われたDeccaの全集中にあるトム・クラウゼの歌が実に味わいがあって良いです。ギターの柔らかな響きも素敵ですが、そこに乗ったクラウゼの温かみのある声がしみじみと聴かせてくれるのです。ヒュンニネンの歌う格調高い歌(Finlandia)もなかなかよいですが、やはりこれはもっと素朴な方が私には好ましいです。
元のシェイクスピアの英語詞で歌っているフィンランドの名バス、キム・ボルイの歌(DG)も歌の味わいは大変に素晴らしいと思うのですが、どうせなら英語で歌うなんてことをせずにもとのスウェーデン語で歌ってもらった方がもっと良かったのにと思えなくもありません。第1曲のCome awayの方はさほど違和感はなかったのですが、こちらは少々気になりました。
( 2007.09.06 藤井宏行 )