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En svane   Op.25-2  
  6 Digter
白鳥  
     6つの詩

詩: イプセン (Henrik Ibsen,1828-1906) ノルウェー
    Digte  En svane (1871)

曲: グリーグ (Edvard Grieg,1843-1907) ノルウェー   歌詞言語: ノルウェー語


Min hvide svane
du stumme,du stille,
hverken slag eller trille
lod sangrøst ane.

Angst beskyttende
alfen,som sover,
altid lyttende
gled du henover.

Men sidste mødet,
da eder og øjne
var lønlige løgne,
ja da,da lød det!

I toners føden
du slutted din bane.
Du sang i døden;
du var dog en svane!

私の白いスワンよ
お前は黙し、静かに
叫びも 啼きもせずに
歌声を発することなど予想もさせない

注意深い守護者として
眠っている妖精を見守る
いつも耳を傾けている
水の上を滑りながら

だがわたしが最後に会ったとき
そんな思い込みも、目も
あっさりと裏切られた
そうだ、白鳥は鳴いたのだ

鳴き声が生まれると共に
おまえはあの世へ旅立つ
ただ一声鳴き死んでいく
お前はまさに白鳥なのだなあ


静謐感ただようグリークの歌曲の中でも、この曲はひときわ透明な詩情が美しい名品だと思います。
静かに水面をすべる白鳥を表すシンプルなピアノに淡々と語るような歌、名旋律というわけではないですが、曲全体の雰囲気は水彩画を見ているようで大変印象に残ります。

グリークの作品の中でも有名な曲ということで、北欧の名歌手達(メルヒオール、ビョルリンク、ニルソン、ゲッダ、フォン・オッター他)が大勢録音していて、それぞれインパクトのある声で魅了してくれますが、顔ぶれをご覧になってお分かりのように、ワーグナーなんかを平然と歌う北欧の歌手はパワーがあり過ぎて、こういう曲には少々柄が大きすぎるような気がします。
私が今まで聴いた中で最高の歌唱は、ドイツ語訳ですけれども、シュヴァルツコップが最後のリサイタルとして録音したもの(London)で、語り口の味わいといいピアノ伴奏(ジェフリー・パーソンズ)の間の取り方の巧さといい絶品といって良い仕上がりです。

(2001.02.21)

原詩をつけるにあたり、ドイツ語の歌詞に頼っていた日本語訳を見直しました。けっこう難しい詩で意味が良く取れなかったところが多いのですが、まあ大体こんな感じではないかと思います。手持ちのCDの英訳もみなこの程度で全然意味が取れず難儀しておりますので...
意外とオーケストラ伴奏(作曲者自身が晩年に編曲したもの)も味わい深いことを発見しました。柄が大きい北欧の歌手たちもこんなスタイルでは絶品でとても楽しめました。

( 2007.01.27 藤井宏行 )


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