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Hôtel   FP 107  
  Banalités
ホテル  
     月並み 

詩: アポリネール (Guillaume Apollinaire,1880-1918) フランス
    Banalités  Hôtel

曲: プーランク (Francis Poulenc,1899-1963) フランス   歌詞言語: フランス語


Ma chambre a la forme d'une cage,
Le soleil passe son bras par la fenêtre.
Mais moi qui veux fumer pour faire des mirages
J'allume au feu du jour ma cigarette.
Je ne veux pas travailler - je veux fumer.

ぼくの部屋は 鳥籠のかたち、
太陽が窓から腕を突っ込んでくる
でもぼくはタバコをふかし つかの間の幻想に浸りたいだけ
日の光でタバコに火をつけよう
働きたくない - タバコが吸いたい


暑いですね。こういう日は何も考えずにグデッとしていたいもの。冷房なんかほとんどなかった私の子供の時代にはそれが夏を乗り切る唯一の方法でしたが、近頃は職場も(もしかすると学校も)冷房が完備して、バリバリと皆さん生産性を上げているのでしょうか。そういった文明が果たして幸せなのかどうか、ちょっと考えさせられました。
私はタバコは吸いませんけれども、夏場の出張先のビジネスホテルなどでは仕事を持って行っても結局手を付けられず、缶ビール片手に普段は見もしないような下らないテレビ番組をつい深夜まで見たりしてしまいますから、この詩でアポリネールが書いているような感覚は何とも身につまされます。いえ、決して働きたくないわけではないですが...

「太陽が腕を突っ込んでくる」という言い回しは真夏の暴力的な陽光の描写としては秀逸です。日の光でタバコに火をつけるというのは子供の頃良くやった(でしょ)、虫眼鏡で太陽の光を黒い紙に集光させて火をつけるというやつですね。なんとも言いがたい物憂いけだるさにあふれています。
クレスパンがDeccaに入れた録音がいわく言いがたいけだるさに満ちていて、フランス語の響きの美しさもあいまって実に素敵でした。

( 2007.08.03 藤井宏行 )


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