Chanson d'Orkenise FP 107 Banalités |
オルクニーズの歌 月並み |
Par les portes d'Orkenise Veut entrer un charretier. Par les portes d'Orkenise Veut sortir un va-nu-pieds. Et les gardes de la ville Courant sus au va-nu-pieds: “Qu'emportes-tu de la ville?” “J'y laisse mon coeur entier.” Et les gardes de la ville Courant sus au charretier: “Qu'apportes-tu dans la ville?” “Mon coeur pour me marier.” Que de coeurs dans Orkenise! Les gardes riaient,riaient, Va-nu-pieds,la route est grise, L'amour grise,ô charretier. Les beaux gardes de la ville Tricotaient superbement; Puis les portes de la ville Se fermèrent lentement. |
オルクニーズの門を通って 馬車乗りが入ろうとしている オルクニーズの門を通って 乞食が出て行こうとしている そこに町の門番 乞食のところに駆け寄って 「町から何を持ち出すんだ?」と訊く 「私の心は置いていきますです」 それから町の門番は 馬車乗りのところに駆け寄って 「町に何を持ち込むんだ?」と訊く 「結婚するためのわしの心さ」 こうしてオルクニーズには心が一杯! 門番は笑いが止まらない 乞食よ、道は灰色だ 愛は報われないぞ、おお馬車乗りよ 町の立派な守衛たちは もったいぶって編みながら そしてオルクニーズの門は ゆっくりと閉じていく |
プーランクの傑作歌曲集「月並み(ベナリテ)」から第1曲です。まるで古い民謡のような素朴な曲調ながら結構深みのある歌です。オルクニーズというのは実在しないどこか架空の町のようですが、御伽噺のような昔あったお話のようなアポリネールの詩も興味深いところ。一箇所だけどうにも意味が取れないところがあったのですが、それが最後のTricotaient superbementのところ。直訳すると「すばらしい編み物をする」となるところですが、門番が何を編むのだろう、と謎なところです。深読みすればこの町に集まってきた「心」を編みこんできれいなアクセサリーを作っているという感じでしょうか。
先日亡くなったフランスの名ソプラノ、レジーヌ・クレスパンが見事な歌を聴かせてくれるのを聴き、即興で訳してみました。ジョン・ウストマンのピアノ伴奏のこのDecca盤。「月並み」からはこれと2曲目の「ホテル」だけというのが少々残念ですが、プーランクでは精緻に美しい「C(セー)」や歌曲集「くじびき」からのユーモラスな歌「赤ちゃん水差し」など、彼女の歌でプーランクの多彩な才能を堪能できるのが嬉しいところ。ベルリオーズの「夏の夜」やラヴェルの「シェエラザード」、それにドビュッシーの「ビリティスの3つの歌」の名唱も聴けて、フランス歌曲を愛する方にとても評価の高いアルバムです。
彼女のフランス歌曲というとあとはマニュエル・ロザンタールのこれまたユーモラスな歌曲集「ブルー氏の歌」と、サティの歌曲をいくつかくらいしか私は聴けていないのですが、美しいフランス語の響きと安定感のある歌で、もっとたくさんのレパートリーを聴いてみたかったものです。ドビュッシーの初期作品などはもし録音があれば絶品ではないでしょうか。
80歳ということで天寿を全うされたのだと思います。ご冥福をお祈りいたします。
( 2007.07.13 藤井宏行 )