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Chanson d'Orkenise   FP 107  
  Banalités
オルクニーズの歌  
     月並み 

詩: アポリネール (Guillaume Apollinaire,1880-1918) フランス
    Banalités  Chanson d'Orkenise

曲: プーランク (Francis Poulenc,1899-1963) フランス   歌詞言語: フランス語


Par les portes d'Orkenise
Veut entrer un charretier.
Par les portes d'Orkenise
Veut sortir un va-nu-pieds.

Et les gardes de la ville
Courant sus au va-nu-pieds:
“Qu'emportes-tu de la ville?”
“J'y laisse mon coeur entier.”

Et les gardes de la ville
Courant sus au charretier:
“Qu'apportes-tu dans la ville?”
“Mon coeur pour me marier.”

Que de coeurs dans Orkenise!
Les gardes riaient,riaient,
Va-nu-pieds,la route est grise,
L'amour grise,ô charretier.

Les beaux gardes de la ville
Tricotaient superbement;
Puis les portes de la ville
Se fermèrent lentement.

オルクニーズの門を通って
馬車乗りが入ろうとしている
オルクニーズの門を通って
乞食が出て行こうとしている

そこに町の門番
乞食のところに駆け寄って
「町から何を持ち出すんだ?」と訊く
「私の心は置いていきますです」

それから町の門番は
馬車乗りのところに駆け寄って
「町に何を持ち込むんだ?」と訊く
「結婚するためのわしの心さ」

こうしてオルクニーズには心が一杯!
門番は笑いが止まらない
乞食よ、道は灰色だ
愛は報われないぞ、おお馬車乗りよ

町の立派な守衛たちは
もったいぶって編みながら
そしてオルクニーズの門は
ゆっくりと閉じていく


プーランクの傑作歌曲集「月並み(ベナリテ)」から第1曲です。まるで古い民謡のような素朴な曲調ながら結構深みのある歌です。オルクニーズというのは実在しないどこか架空の町のようですが、御伽噺のような昔あったお話のようなアポリネールの詩も興味深いところ。一箇所だけどうにも意味が取れないところがあったのですが、それが最後のTricotaient superbementのところ。直訳すると「すばらしい編み物をする」となるところですが、門番が何を編むのだろう、と謎なところです。深読みすればこの町に集まってきた「心」を編みこんできれいなアクセサリーを作っているという感じでしょうか。

先日亡くなったフランスの名ソプラノ、レジーヌ・クレスパンが見事な歌を聴かせてくれるのを聴き、即興で訳してみました。ジョン・ウストマンのピアノ伴奏のこのDecca盤。「月並み」からはこれと2曲目の「ホテル」だけというのが少々残念ですが、プーランクでは精緻に美しい「C(セー)」や歌曲集「くじびき」からのユーモラスな歌「赤ちゃん水差し」など、彼女の歌でプーランクの多彩な才能を堪能できるのが嬉しいところ。ベルリオーズの「夏の夜」やラヴェルの「シェエラザード」、それにドビュッシーの「ビリティスの3つの歌」の名唱も聴けて、フランス歌曲を愛する方にとても評価の高いアルバムです。

彼女のフランス歌曲というとあとはマニュエル・ロザンタールのこれまたユーモラスな歌曲集「ブルー氏の歌」と、サティの歌曲をいくつかくらいしか私は聴けていないのですが、美しいフランス語の響きと安定感のある歌で、もっとたくさんのレパートリーを聴いてみたかったものです。ドビュッシーの初期作品などはもし録音があれば絶品ではないでしょうか。
80歳ということで天寿を全うされたのだと思います。ご冥福をお祈りいたします。

( 2007.07.13 藤井宏行 )


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