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Come away,come away,death   Op.18-1  
  Let us garlands bring
来るがいい 来るがいい 死よ  
     花輪を捧げよう

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    Twelfth Night (十二夜) Act.2 Scene.4 Come away,death

曲: フィンジ (Gerald Finzi,1901-1956) イギリス   歌詞言語: 英語


Come away,come away,death,
And in sad cypress let me be laid;
Fly away,fly away,breath;
I am slain by a fair cruel maid.
My shroud of white,stuck all with yew,
O prepare it;
My part of death,no one so true
Did share it.

Not a flower,not a flower sweet,
On my black coffin let there be strown;
Not a friend,not a friend greet
My poor corpse where my bones shall be thrown;
A thousand thousand sighs to save,
Lay me,O,where
Sad true lover never find my grave,
To weep there.

来るがいい 来るがいい 死よ
そして悲しみの糸杉の中にわれを横たえよ
飛び去るがいい 飛び去るがいい この命よ
われは美しく冷酷な女に殺されたのだ
白き死装束を イチイを縫い付けて
おお 用意するがいい!
わが死のありようは いかなる誠実な者とて
分かち合えるものではないのだ!

一輪の花さえ 一輪のかぐわしき花さえ
わが黒き棺の上に撒かせてはならぬ
ひとりの友さえ ひとりの友さえ見送るな
わがみじめな亡骸を 骨が打ち捨てられるであろうときに
千回の 千回の溜息は胸にとどめておくのだ
われを横たえよ おお
悲しき本当の恋人すら わが墓を見つけられないところに
そこで涙にくれようとした場所に


既にフランツ・ペーターさんによってこの詩にロジャー・クィルターがつけた曲が紹介されています。シェイクスピアの「十二夜」の成立背景まで調べた読み応えのある記事ですのでぜひご覧いただければと思います。
クィルターだけでなく、多くの作曲家のインスピレーションを刺激するからでしょうか。英米圏の古今の作曲家たちによって様々なメロディが付けられています。今回私が取り上げるのは、シェイクスピアの戯曲から5つの歌を取り上げているジェラルド・フィンジの歌曲集「花輪を捧げよう(Let us garlands bring)」の第1曲です
ちなみにその5曲は

[1] 来たれ、来たれ、死よ(十二夜)
[2] シルヴィアは誰?(ヴェローナのニ紳士)
[3] もう恐れるな 灼熱の太陽を (シンベリン)
[4] おお私の恋人(十二夜)
[5] 恋する男とその恋人(お気に召すまま)

3曲目のシンベリンからの曲はちょっと珍しいかも知れませんが、あとの4曲はシェイクスピアの戯曲から取り上げた曲としては古今東西、多くの作品があるものばかりです。なお歌曲集のタイトル「花輪を捧げよう」は第2曲「シルヴィアは誰?」の詞の最後の一節から取られています。これから順に取り上げて行こうと思っていますがまずは第一曲。他の作曲家の同じ詩に付けたどの作品に比べても気品溢れる、溜息の出るような美しい歌です。ピアノ伴奏に現れる鮮烈な和音がとりわけ印象的。

これを書くにあたってブリン・ターフェルの歌・マルコム・マーティノーのピアノによるDG盤を改めて聴いてみましたが、深みのある歌唱で実にいいと思いました。

( 2007.06.30 藤井宏行 )


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