落城のたそがれ |
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守る力も 尽きはてて はや 落城の夕まぐれ 煙る敵地に 踏み入れば 夕雲赤く あゝ身に沁みて 勝つてあふるる 喜びに 血潮は鳴れど 敵ながら よくぞ防いだ 戦つた 名残を見れば あゝちる涙 焼けて千切れて 猶残る ユニオン・ジヤツクを憫みて 路に乱れし 花一つ 手向けてゆくぞ あゝわが兵は 夜の光も ほの青く 港をこめて 暮れゆけど 生きてなほ征く つはものの 深き決意を あゝ誰か知る |
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太平洋戦争序盤、破竹の勢いで戦線を拡大していった日本軍がシンガポールを陥落させたときのことを歌っています。音楽は多くの戦時歌謡のように悲壮な響きをさせていますが、どこかまだ余裕を感じさせる詩と曲です。
( 2021.01.31 藤井宏行 )