TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Die stille Stadt   Op.50-5  
  6 Lieder
静かな町  
     6つの歌

詩: デーメル (Richard Fedor Leopold Dehmel,1863-1920) ドイツ
    Weib und Welt  Die stille Stadt

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: ドイツ語


Liegt eine Stadt im Tale,
Ein blasser Tag vergeht.
Es wird nicht lange dauern mehr,
Bis weder Mond noch Sterne
Nur Nacht am Himmel steht.

Von allen Bergen drücken
Nebel auf die Stadt,
Es dringt kein Dach,nicht Hof noch Haus,
Kein Laut aus ihrem Rauch heraus,
Kaum Türme noch und Brücken.

Und als dem Wandrer graute,
Da ging ein Lichtlein auf im Grund
Und durch den Rauch und Nebel
Begann ein leiser Lobgesang
Aus Kindermund.

ひとつの町が谷間に横たわる
鉛色の一日が過ぎていく
もうそんなに長くはかからないだろう
月や星が消えて
夜だけが空に立ち現れてくる時までは

まわりすべての山々から流れ出す
霧が、その町へと向かっていく
何も突き抜けられはしない 屋根も中庭も家も
遠くからの霧煙に包まれた音も
塔さえも、そして橋も

だが、さすらう旅人が怖れたときに
大地より小さな灯りが浮かび上がってきた
そして霧や煙を突き抜けて
穏やかな賛歌が聞こえてきたのだ
子供の口から


この作品もリヒャルト・デーメルのドイツ語詩につけたもの。彼の詩の幻想的な味わいにシベリウスの音楽の美質が見事に反映されて実にすばらしい作品になっています。
霧に包まれて静かに眠っている谷間の町、流れ出してくる霧に包まれる建物のイメージはまるで洪水に飲みこまれるかのよう。しかし全く音もなく白い渦の中に消えていきます。ヨーロッパのゴシック・ホラー映画の舞台もさながらの光景です。こんなところをひとりさすらう旅人はさぞかし怖いのでしょうね。
そこへ突き抜けるように浮かび上がってくる小さな灯り。これはやってくる来訪者を出迎える町の人の持っているランタンでしょうか。そしてランタンを持つ者の歌声が聞こえてきます。子供の...
何を意味しているのかはヨーロッパの文化に詳しくない私にはわからなかったのですが、イメージはなんとも鮮烈です。
(メールにてさる方よりいくつかの重要なご指摘を頂き、解釈を見直しました。確かにこの町に向かう旅人を出迎えるランタンの光が谷底より突き上げてくる、というイメージですね。Yさま、ありがとうございます)


この詩にはアルマ・マーラーも曲を付けているのだそうです。まだ聴いたことはありませんが比べて聴いて見るのも面白そうですね。

( 2007.06.15 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ