空しき秋 |
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老いたる者をして静謐の裡(うち)にあらしめよ そは彼等こころゆくまで悔いんためなり 吾は悔いんことを欲す こころゆくまで悔ゆるは洵(まこと)に魂を休むればなり あゝ はてしもなく(涕)なかんことこそ望ましけれ 父も母も兄弟(はらから)も友も はた見知らざる人々をも忘れて 東明(しののめ)の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く はたなびく小旗の如く涕かんかな 或はまた別れの言葉の こだまし 雲に入り 野末にひびき 海の上への風にまじりてとことはに過ぎゆく如く...... 反歌 あゝ 吾等怯懦のために長き間 いとも長き間 徒なることにかゝらひて 涕くことを忘れゐたりしよ げに忘れゐたりしよ...... |
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青空文庫の「在りし日の歌」の該当する詩のところに脚注として
「空しき秋二十数篇は散佚して今はなし。その第十二のみ、諸井三郎の作曲によりて残りしものなり。」とあります。
( 2021.01.19 藤井宏行 )