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月夜の浜辺    
  中原中也の詩による三題
 
    

詩: 中原中也 (Nakahara Chuuya,1907-1937) 日本
    在りし日の歌 (1938)  月夜の浜辺

曲: 石井歓 (Ishii Kan,1921-2009) 日本   歌詞言語: 日本語


月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
   月に向つてそれは抛れず
   浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?



( 2021.01.17 藤井宏行 )


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