旅役者 |
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けふがわかれか、のうえ、 春もをはりか、のうえ、 旅の、さいさい、窓から 芝居小屋を見れば、 よその畑に、のうえ、 麥の畑に、のうえ、 ひとり、さいさい、からしの 花がちる、しよんがいな。 |
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この曲のメロディで私が知っていた歌詞は「富士の白雪やノーエ」というものでしたが、この「ノーエ節」、幕末のころに神奈川・静岡あたりではやっていた「農兵節」という曲のようです。幕末に伊豆の代官が農民たちを集めて組織化した農兵隊の間で歌われたことからこのような名前がついたようですが、WEBを色々と調べて見つけた歌詞は、「野毛の山からノーエ 野毛の山からノーエ 野毛のサイサイ 山から 異人館を見れば 鉄砲かついでノーエ 鉄砲かついでノーエ 鉄砲サイサイかついでならび足」といったものでした。野毛の山とは動物園のあるあの横浜の地名でしょうか。私が言うまでもなく北原白秋はこの歌詞を下敷にしてこの詩を書いているのはお分かりでしょう。公演の時期が終わってまた次の旅に出なくてはならない旅役者のやるせない気持ちを歌ったものではありますが...
橋本の書いたのも、歌のメロディはそのままこの民謡のメロディ、ただピアノの伴奏が目の覚めるようなリズムを奏でて、この聞き慣れた民謡の調べを引き立ててインパクトのあるものにしています。間宮芳生氏による日本民謡のピアノ伴奏歌曲への編曲へとつながっていく試みの先駆者の一人として、この橋本国彦も数えてもいいのかも知れません。ちょっと奔放すぎるところがあるかも知れませんがこの才気は私には魅力でした。こういうパワフルな曲ならやはり関定子さんの歌がいいですね。
( 2007.05.26 藤井宏行 )