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びいでびいで    
  日本の笛
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
    日本の笛 (1922)  びいでびいで

曲: 平井康三郎 (Hirai Kozaburo,1910-2002) 日本   歌詞言語: 日本語


びいでびいでの
今 花盛り
紅いかんざし
暁(あけ)の霧

びいでびいでの
あの花かげで
何とお仰(しゃ)った
末(すえ)かけた



桜の花の自生しない小笠原では、春の訪れを告げる花としてこの「びいでびいで(ビーデビーデ)」がその代わりを務めているようで、別名「南洋桜」とも呼ばれているようです。桜の花のように葉が出て木が緑色になる前に花が咲くのでこういう名がついたのだとか。
2月の末頃から4月の半ばくらいが丁度花の咲くシーズンのようです。ただ桜の花のように淡いピンクではなく、この詩でも「紅いかんざし」と歌われているように真っ赤な花をつけるこの植物、正式な名は「ムニンデイコ」で沖縄の県花であるデイゴの種類なのだそうです。あちらも真っ赤な花が付きますね。もっとも沖縄のデイゴは初夏〜夏にかけてが花のシーズンのようですが。

南の島の春の情景はとても鮮烈です。平井康三郎の編んだ「日本の笛」の第8曲で、ここから6曲続けて小笠原の情景が歌われますが、最初のこの曲からパアッと陽光燦々とした南の情景が目に浮かぶよう。暖かい小笠原でも春は恋のシーズンなのでしょうか。島の娘の付けた真紅の花の髪飾りと夜明けの霧に煙る林の情景との対比が見事です。

この曲、歌曲集の中でも有名なもののようでよく単独で取り上げられることもありますが、どうせならやはり全曲を聴いてみられてはどうでしょうか。関定子さんの見事な録音があります。

( 2007.04.07 藤井宏行 )


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