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Nocturne   Op.43  
  Deux mélodies
夜曲  
     2つのメロディ

詩: リラダン (Auguste,Comte de Villiers de L'isle-Adam,1838-1889) フランス
    Contes cruels - Conte d'Amour  Éblouissement

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


La nuit,sur le grand mystère,
Entr'ouvre ses écrins bleus:
Autant de fleurs sur la terre,
Que d'étoiles dans les cieux!

On voit ses ombres dormantes
S'éclairer à tous moments,
Autant par les fleurs charmantes
Que par les astres charmants.

Moi,ma nuit au sombre voile
N'a,pour charme et pour clarté,
Qu'une fleur et qu'une étoile
Mon amour et ta beauté!


夜は、大いなる神秘の中で
青い宝石箱をそっと開ける
地上に咲く花の数だけ
この空に星は輝く

夜が眠っている影が見える
それはいつも輝いている
魅惑的な花々に照らされるように
魅惑的な星たちによって

ぼくには、暗いヴェールを被ったぼくの夜には
そんな魅惑も 輝きもない
ひとつの花とひとつの星
ぼくの愛と きみの美しさを除いては!


フォーレはヴィリエ・ド・リラダンの詩による歌曲は2曲だけしか書いていません。が、それら2曲の何と素晴らしいことでしょう。耽美的とさえいえる濃密な詩にフォーレの神秘的とさえ言えるメロディが付いて、とても不思議な魅力を醸し出しています。なかでもこの「ノクターン」は私の大好きな曲。夜空に天の川のように輝く星の描写が実に良いです。恋人に言う台詞としては日本人の感覚からするとかなりクサイところも感じられますけれども非常にお洒落なメロディなので、フランス語で聴くとなかなかにハマっています。こんなのはやはりジェラール・スゼーのバリトンで聴くのが良いでしょうか。カミーユ・モラーヌの気品溢れる歌もなかなかにすばらしいですが、この曲に関してはスゼーの濃密さの方が私にとっては魅力です。

ヴィリエ・ド・リラダン(1838-1889)はブルターニュの名門貴族の子として生まれましたが、生まれた時には既に家は没落しており、赤貧洗うような悲惨な生活を送る中からこんな高踏的な詩を生み出してきた人なのだそうです。

この曲には副題として、”Un soir fait de rose et de bleu mystique(バラ色と神秘的な青い色の夕暮れに)”というボードレールの詩の一節が付いています。これは「悪の華」の中の「恋人たちの死」La mort des amants の中から。これはドビュッシーが曲をつけていますので詩全体はその項をご覧ください。もっともネットで検索したリラダンの原詩では、詩集全体にハイネの詩の一節“Et que Dieu ne te récompense jamais du bien que tu m'as fait!”が引用されているのみで、このボードレールの一節は引用されてはいないようでした。
したがってどの段階で誰がこの副題を引用したのかはまだ調べきれておりません。リラダンはボードレールに高く評価されていたのだそうですので、詩人自身による引用なのかも知れませんけれども。

( 2007.04.07 藤井宏行 )


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