陽春 朔太郎の四つの詩 |
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ああ、春は遠くからけぶつて来る、 ぽつくりふくらんだ柳の芽のしたに、 やさしいくちびるをさしよせ、 をとめのくちづけを吸ひこみたさに、 春は遠くからごむ輪のくるまにのつて来る。 ぼんやりした景色のなかで、 白いくるまやさんの足はいそげども、 ゆくゆく車輪がさかさにまわり、 しだいに梶棒が地面をはなれ出し、 おまけにお客さまの腰がへんにふらふらとして、 これではとてもあぶなさうなと、 とんでもない時に春がまつしろの欠伸をする |
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( 2020.09.20 藤井宏行 )