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Uzh gasli v komnatakh ogni   Op.63-5  
  6 Romansov na stikhi K. R
もう部屋の灯かりは消えて  
     ロマノフ公の詩による6つの歌曲

詩: ロマノフ (Konstantin Konstantinovich Romanov,1858-1915) ロシア
      Уж гасли в комнатах огни

曲: チャイコフスキー (Pyotr Ilyich Tchaikovsky,1840-1893) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Uzh gasli v komnatakh ogni...
Blagoukhali rozy...
My seli na skam’ju v teni
razvesistoj berezy.

My byli molody s toboj!
Tak schastlivy my byli
nas okruzhavsheju vesnoj,
tak gorjacho ljubili!

Dvurogij mesjats navodil
na nas svoe sijan’e;
ja nichego ne govoril,
bojas’ prervat’ molchan’e...

Bezmolvno sinikh glaz tvoikh
ty opuskala vzory -
krasnorechivej slov inykh
nemye razgovory.

Chego ne smel poverit’ ja,
chto v serdtse ty taila,-
vse eto pesnja solov’ja
za nas dogovorila.

もう部屋のあかりは消えて
バラの甘い香りがただよっていた
ぼくたちはベンチに腰かけていた
枝を広げた白樺の陰の

きみもぼくも若かった!
なんてぼくたちは幸福だったことか
ぼくらは春に囲まれて
そして熱く愛し合っていたんだ!

三日月は投げかけていた
ぼくたちに月の光を
ぼくは何も言わなかった
この沈黙を破るのが怖かったから

黙ったままその青い瞳を
きみはそっと下に向けた
他のどんな言葉よりも多くを語るのが
この無言の会話なのだ

ぼくがとても信じられなかったことを
そしてきみが心に秘めていたことを
みんなナイチンゲールの歌声が
ぼくたちの代わりに話してくれた


ロマノフ公の詩による歌曲から第5曲、春先のデートの光景でしょうか。ドビュッシーやフォーレの歌曲になっているヴェルレーヌの詩「ひそやかに」などと全く良く似たシーンですが、あそこで描かれていたような心理の奥深いひだの表現はなくて、何と言いますかホンワカした幸福感に包まれています。歌にするのであればこういうシンプルな感情表現の方が作りやすいでしょうか。チャイコフスキーも実に美しいメロディを付けていますのでこちらの方が耳に優しいです。チャイコフスキー後期の歌曲はこれなんかも含めてあまり格調高くない詩ばかり選んで歌を付けているような感じですが、それがまた彼の俗受けする美しいメロディに妙にはまって素晴らしいものになっているのがけっこうあります。

国内盤も出ているオリガ・ボロディナのチャイコフスキー歌曲集に入っているやつが入手も容易でしょうし、素敵な歌唱です。ただ残念ながら他にはあまり録音もなさそうな感じです。

( 2007.03.23 藤井宏行 )


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