Volevo un gatto nero |
黒いネコが欲しかったのに |
詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
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ボローニャで毎年開かれるイタリアの子供の歌の音楽祭Zecchino d'Oro(ゼッキノ・ドロ 「金の硬貨」の意)からはNHKの「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」で紹介されて日本の子供たちにもお馴染みの曲がいくつも生まれてきています。1968年のトレロ・カモミロ(IL TORERO CAMOMILLO 日本では阪田寛夫の訳で1970年「みんなのうた」で放送)なんていう曲には私も思わず懐かしさを感じてしまうのですが、それよりも元の歌詞が興味深かったのがその翌1969年の第3位に入賞したこの曲です。実はこれは日本で大ヒットしているのですが、私はこの曲、ゼッキノ・ドロ発の子供の歌だったとはついぞ知らなかったのです。
同じ1969年に皆川おさむの可愛らしいヴォーカルで一世を風靡した「黒ネコのタンゴ」、今でも子供向けの童謡集に良く収録されていることがありますが、ここで作詞家のみおた・みずほが付けた意味深長な歌詞は「だけどときどき爪をだして ぼくの心を悩ませる」であるとか「おいしいエサにつられちゃって あとで泣いても知らないよ」なんていうまさにオトナの世界を感じさせるアンニュイなものでしたので、私はこれは大人のポップスを日本語で子供に歌わせてミスマッチ感を狙い、それがまんまと大当たりしたものなのだとばかり思っていたのです。
ところが実態は、原曲は冒頭にとつぜんワニは出てくるわ次にキリンは出てくるわゾウは出てくるわの動物園状態、「ぼくの恋人は黒いネコ」なんてフレーズはどこにもありません。この詞ならまあ子供の歌であってもまあおかしくないような内容です。
大意をご紹介しますと
ほんもののクロコダイルやアリゲーターをぼくは持ってるんだ。それを君にあげるから
黒猫をおくれよ
ぼくは黒猫が欲しかったんだ、クロが、クロが、でも君は白猫しかくれない
うそつき、もう遊んであげない...
てな感じで以下、2番ではキリンをあげるから、3番ではインドゾウ、4番では動物園全部をあげるから黒猫をちょうだいっ!ていうような歌になっておりました。皆様も恐らく耳になじんでおられると思われる「黒ネコのタンゴ・タンゴ・タンゴ」の部分は原詞では歌のタイトルにもなっている「Volevo un gatto nero nero nero(欲しかったんだ黒ネコ、黒いのが、黒いのが)」で、タンゴではなくて黒がイイ〜っていう連呼だったのですね。イタリア語で聴くとなかなかその響きも面白かったのですが、たぶんこの歌詞をそのまま直訳したものでは「黒ネコのタンゴ」ほどヒットもしなかっただろうなあ、という気もします。
日本語のWikipediaでなぜかこの曲えらく詳しく解説されています。そして著作権は大丈夫かな、と思わなくもないのですが、そこから原詞や詳細な日本語訳、そしてイタリア語で歌われたものの一部が試聴できるサイトへのリンクがありますのでご興味をお持ちの方はアクセスされてみてはいかがかと思います。
( 2007.03.16 藤井宏行 )