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Funiculì,Funiculà    
 
フニクリ フニクラ  
    

詩: トゥルコ (Giuseppe Peppino Turco,1846-1903) イタリア
      

曲: デンツァ (Luigi Denza,1846-1922) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Aieressera,oi' ne',me ne sagliette,
   tu saie addo'? tu saie addo'?
Addo' 'stu core 'ngrato cchiu' dispietto
   farme nun po'! farme nun po'!
Addo' lo fuoco coce,ma si fuie
   te lassa sta! te lassa sta!
E nun te corre appriesso,nun te struie,
   'ncielo a guarda'!... 'ncielo a guarda'!...

Jammo Jammo 'ncoppa,jammo ja',
Jammo Jammo 'ncoppa,jammo ja',
Funiculì,Funiculà,Funiculì,Funiculà!
'ncoppa,jammo ja',
Funiculì,Funiculà


Ne'... jammo da la terra a la montagna!
   no passo nc'e'! no passo nc'e'!
Se vede Francia,Proceta e la Spagna...
   Io veco a tte! Io veco a tte!
Tirato co la fune,ditto 'nfatto,
   'ncielo se va.. 'ncielo se va..
Se va comm' 'a lu viento a l'intrasatto,
   gue',saglie sa'! gue',saglie sa'!

Jammo Jammo 'ncoppa,jammo ja',
Jammo Jammo 'ncoppa,jammo ja',
Funiculì,Funiculà,Funiculì,Funiculà!
'ncoppa,jammo ja',
Funiculì,Funiculà


Se n' 'e' sagliuta,oi' ne',se n' 'e' sagliuta
   la capa già! la capa già!
E' gghiuta,po' e' turnata,po' e' venuta...
   sta sempe cca'! sta sempe cca'!
La capa vota,vota,attuorno,attuorno,
   attuorno a tte! attuorno a tte!
Sto core canta sempe nu taluorno
   Sposammo,oi' ne'! Sposammo,oi' ne'!

Jammo Jammo 'ncoppa,jammo ja',
Jammo Jammo 'ncoppa,jammo ja',
Funiculì,Funiculà,Funiculì,Funiculà!
'ncoppa,jammo ja',
Funiculì,Funiculà


昨日の夜に ねえ君、ぼくは出かけたんだ
  どこだか分かる? どこだか分かる?
冷たい心が ぼくを悲しませないところさ
  もうこれ以上 もうこれ以上
そこは炎が燃えてるけれど、もし逃げようとすれば
  逃がしてくれる 逃がしてくれる
そして追ってはこないし 君を退屈させない 
  空を見ていれば 空を見ていれば

行こう 行こう 上に行こう
行こう 行こう 上に行こう
フニクリ フニクラ フニクリ フニクラ
上に行こう 
フニクリ フニクラ


ぼくらは麓から山のてっぺんまで行くんだ!
  一歩も歩かずに 一歩も歩かずに
フランスやプロチダ そしてスペインが見える
  ぼくには君が見える ぼくには君が見える
ケーブルに引っ張られ あっという間に
  車は空を行く 車は空を行く
まるで風のように走っていく
  昇る 昇る

行こう 行こう 上に行こう
行こう 行こう 上に行こう
フニクリ フニクラ フニクリ フニクラ
上に行こう 
フニクリ フニクラ


昇りきったなら ねえ君 昇りきったなら
  もう頂上だ もう頂上だ
車は行って 戻り またやってくる
  いつもここにいる いつもここにいる
噴火口を回る、回るんだ、ぐるぐる ぐるぐると
  君のまわりを! 君のまわりを!
心はいつも歌っているよ
  君との結婚の日を 君との結婚の日を

行こう 行こう 上に行こう
行こう 行こう 上に行こう
フニクリ フニクラ フニクリ フニクラ
上に行こう 
フニクリ フニクラ



メロディだけは恐らくどなたも良くご存知であろうナポリのカンツォーネ「フニクリ フニクラ」、原詩を調べようとするとけっこう難儀しました。邦訳で良く知られた「ゆこう ゆこう 火の山へ〜(訳:青木爽/清野協)」の歌詞はこのメロディで歌えるようにしているためかなり内容を略しかつ変更していますし、カンツォーネなどをオペラ歌手が歌っているレコードやCDなどの対訳を見るとイタリア語素人の私が見ても、それはちょっと違うんじゃないか?とすぐ分かるようなところや、字数が全然合わなくて明らかに端折っているのが分かるようなところが満載、そして歌詞の意味が日本語で読んでもさっぱり分かりません。
ちょっとあんまりなので、持ち前の好奇心から原詩を探し出し訳を試みてみました。
もっともこれ、原詩はナポリの言葉なのでそのまま読んでもまるで訳せません。日本語でいえば標準語と鹿児島弁くらいの違いはあるでしょうか。それで恐らくCDの対訳などを担当された方も悩まれた末に、締め切りが迫ってきてエイヤッとフィーリングで訳されてしまわずにはいられなかったんだろうな、というのが共感できてしまうような大変さです。
幸いにして今では、ネットの上に標準イタリア語訳から英訳、そして独自に調べられて邦訳されているものとたくさんの情報を容易に探し出すことができますので、それらを参照しながらちょっとは話の辻褄が取れるように訳してみることにしました。

訳してみてよく分かったことは、この曲想にぴったりの情熱的なラブソングであったこと。もともとこの歌は火山観光のため開通したばかりのケーブルカーのCMソングとして書かれたものだと言われていますが、そのような観光のセールスポイントも巧みに織り込みながら恋人を誘います。
「火が燃えているけれども追いかけてこない」(観光地の安全性を強調)であるとか
「空を見れば退屈させない=景色がきれい」(眺望の希少性を強調)、これは2番で頂上からはスペインまで見えると再び具体的に強調されていますね。
「一歩も歩かずに頂上だ」(ケーブルカーの利便性を強調)とまあこういった具合になかなか良くできたコマーシャルです。
ちなみにイタリア語でケーブルカーのことはフニコラーレ(英語ではfunicular)と言うのだそうで、「フニクリ フニクラ」というのはその語呂合わせです。
日本でも「ちかてつ(地下鉄)」という童謡のサビに「ちかちかごーごーごー」というフレーズがありましたがそんな感じでしょうか。

最後の3番がよく意味が取れなかったのですが、これはどの訳を見ても似たような状況でさっぱり分からないです。特に分からないのはla capa(標準語でla testa)=The headの解釈。私はこれはどう考えても山の頂上のことだと思いそう訳しましたが、そうすると次のLa capa vota(The head turns)の回転するっていうのはいったい何だろう?という疑問が生じて参ります。しかも恋人のまわりをぐるぐると...
その次に「その心はいつも歌ってる(Sto core canta sempe)」と書いてあるフレーズの対比から、このLa capaはこの歌っている男の頭ではないか、と解釈している英訳や邦訳もいくつかありました。そうするとこの男がウロウロウロウロしているイメージになって、日本語のWikipediaでこの曲が紹介されているところでの記述「恋人に告白できずに悩んでいる」いじけた男という感じにも取られてしまいますが、この歌の元気のいい曲想からしても私はそれはちょっと違うのではないかと思います。
そこでちょっと無理があるかも知れないのですが、このLa capaはやはり頂上ということにして、噴火口のまわりをぐるぐる回る、という解釈にしてみました。そうするとその下の「心 core」というのはこの歌ってる男の心ではなくて火口の中心、マグマがぐつぐつと煮えているところですね。その煮えたぎりを恋する人の燃える恋心に見立てているのだ、と見ると一応全体の筋は通ります。例えば2番の山に登ればスペインだけでなく「君が見える」であるとかの部分も火口が「心を燃え立たせている君」だとすれば納得です。

また、風のように走ったり、山の上と下を行ったり来たりするのはもちろんケーブルカーですよね。これがはっきり示されていないので(イタリア語はよく主語を省略します)混乱している訳もよく見かけますが、恐らくそうだろうということでここには車という言葉を補ってみました。ほんとはもっと適切な言葉があればそれにしたいのですけれども、ケーブルカーのことを簡潔に表す日本語のいい表現がなかったのでちょっと違和感を覚えつつも車のままにしています。

もともとこの歌は1880年、ナポリ近郊のベスビオス火山に設置されたケーブルカーの客寄せ宣伝のために作られた歌だそうです。作詞したのは地元のジャーナリストなのだとか。ナポリターナ(ナポリ歌曲)のコンテストであるその年のビエディグロッタ音楽祭にも出されて大ヒットし、当時あまりにナポリで流行したためにこれが民謡であると思う人も出たようです。イタリアを訪れたドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスもこの曲が民謡だと思い込んで彼のオーケストラ曲「イタリアから Aus Italien」にこのメロディーを使ったことから作曲者のデンツァと著作権侵害の裁判となり、結局著作権料を支払わなければならなくなった、というエピソードがやはりWikipediaに載っておりました。

パヴァロッティあたりの屈託のない歌がスタンダード的歌唱ということになるのでしょうが、面白かったのはマリオ・ランツァの亡くなる1年前のRCA録音(1958)。これ映画音楽で有名なエニオ・モリコーネの編曲でして、微妙な転調が入ったりしてけっこう技巧的。ちょっとランツァの歌唱スタイルにはマッチしていないところもなくはないですが、ド田舎のナポリ民謡を都会的に洗練しましたっていう感じが興味深いです。


日本では昭和初期(1930頃)に他の洋モノのジャズソングなどと同様に全く別の歌詞を付けた歌で歌われたことがあったようです。オリジナルの歌詞に忠実な訳詞では、楽譜出版に携わっていてたくさんの外国曲の訳詞を書いている妹尾幸陽のものがあり、1935年頃の録音でしょうか、ソプラノの三浦環によって歌われたものを聴くことができました。その訳では「行こう 行こう 火の山へ」のところは「そら そら 登ってゆく」になっており、またフニクリ・フニクラはそのまま使われています。それから2番では山に名前がついていて「行くよハラカラ山へ」となっていました。ハラカラ山とはどこだかは不明です(もしかして麓からの意味で「腹から」?)
もうひとつ私が聴くことができたのはこれより更に少し前の大正6年(1917)の和製オペレッタ「カフェーの夜」(詞:益田太郎冠者・曲:佐々紅華)のワンシーン「おてくさん」に使われたこのメロディ。キザに言い寄る木座野を張り倒したおてくさんが、木座野の涙ながらの訴えにほだされてそれなら結婚しましょうというデュエットとなるところです。この作詞とされる益田太郎の著作権の方は切れているのでこちらはご紹介しましょう。


そんな心と知らないで

  情けない 情けない

今日の今まであなたをば

  情けない 情けない

キザな和製のチャップリンと

  こりゃひどい ごあいさつ

思う私のつれなさよ

  おやおや しめたなあ

そんなにあなたが慕うなら 
これから夫婦(めおと)になりましょう
嬉しや 嬉しや 嬉しや 嬉しや
出雲の神の引き合わせ


これさ可愛いおてくさん

  木座野さん 木座野さん 

日ごろ祈りし甲斐あって

  あれさマア 放して

ようやく想いが届くとは

  あれさマア 恥ずかし

こんな嬉しいことはない

  あれさマア 静かに

こんなに私が慕うゆえ
これから夫婦(めおと)になりましょう
嬉しや 嬉しや 嬉しや 嬉しや
出雲の神の引き合わせ

おきゃんで勝気なおてくさんと、間抜けで頼りない気障男・木座野とのこのメロディでの掛け合いが実に面白いです。リフレインの「フニクリ フニクラ」が「嬉しや 嬉しや」となってるところなど思わずにやりとさせられます。


そしてこの「フニクリ フニクラ」の日本での戦後のリバイバルはずっと下って昭和36年(1961)、今でも良く知られた青木爽/清野協の詞によって「みんなのうた」で紹介されたのがきっかけのようです。著作権の関係で掲載できませんが、これ歌詞としてはたいへん良くできていると私は思います。もしかしたら原詞より良くできた歌かも(っていうと誉め過ぎか?でもナポリ語の原詞を書いたのは専門の作詞家じゃなかったことですし...)

また、今の子供たちには火の山の登山電車の歌詞ではなくて、オニのパンツの替え歌の方がおなじみでしょうか。NHKの幼児番組「おかあさんといっしょ」や「いないいないばあ」などでも良く取り上げられるので我が家の娘もこっちの方をよく知っています(それでオリジナルのイタリア語の「フニクリ・フニクラ」をパヴァロッティの歌で聴かせたらバカウケでした)
この詞は私が小学生の頃からあったのは記憶しています。作詞者不詳ということなので(この歌詞が流行り出した当時の「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さん・田中星児氏作ではないかとは言われてはおりますが)こちらも載せておきましょう。


  おにのパンツは いいパンツ
    つよいぞー つよいぞー
  トラの毛皮で できている
    つよいぞー つよいぞー
  5年はいても やぶれない
    つよいぞー つよいぞー
  10年はいても やぶれない
    つよいぞー つよいぞー

  はこう はこう おにのパンツ
  はこう はこう おにのパンツ
  あなたも あなたも あなたも あなたもー
  みんなではこう おにのパンツ


原詩がこれだけ謎なのに、こんなに多様な違った歌詞で日本で歌い続けられている歌もなかなかないでしょう。これもまた音楽のひとつのあり方なのですね。

( 2007.03.11 藤井宏行 )


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