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Med en vandlilje   Op.25-4  
  6 Digter
睡蓮に寄せて  
     6つの詩

詩: イプセン (Henrik Ibsen,1828-1906) ノルウェー
    Digte  Med en vandlilje (1871)

曲: グリーグ (Edvard Grieg,1843-1907) ノルウェー   歌詞言語: ノルウェー語


Se,Marie,hvad jeg bringer;
blomsten med de hvide vinger.
På de stille strømme båren
svam den drømmetung i våren.

Vil du den til hjemmet vie
fæst den på dit bryst,Marie;
bag dens blade da sig dølge
vil en dyp og stille bølge.

Vogt dig,barn,for tjernets strømme.
Farligt,farligt der at drømme!
Nøkken lader som han sover;
liljer leger ovenover.

Barn,din barm er tjernets strømme.
Farligt,farligt der at drømme;
liljer leger ovenover;
nøkken lader som han sover.

Se,Marie,hvad jeg bringer;
blomsten med de hvide vinger.
På de stille strømme båren
svam den drømmetung i våren.

ご覧、マリー、ぼくが手に持っているのは
白い翼を持つ花だ
静かな流れの上を運ばれて
そいつは春の夢に満たされて漂ってきた

きみがもしこれを家に持って帰りたいのなら
しっかりと胸に着けるんだ、マリー
花びらの裏には隠れている
深くて静かなさざ波が

気を付けるんだよ、きみ、水の流れに
危ない、危ないんだ そこで夢を見るのは
水の精が眠ったふりをして
花たちが上でゆらめいているから

きみよ、きみの胸も水のように流れる
危ない、危ないんだ そこで夢を見るのは
花たちが上でゆらめいて
水の精が眠ったふりをしているから

ご覧、マリー、ぼくが手に持っているのは
白い翼を持つ花だ
静かな流れの上を運ばれて
そいつは春の夢に満たされて漂ってきた


イブセンの詩に付けたグリーグの歌曲としては「白鳥」の次に良く知られたものでしょう。憧れに満ちた熱情で流れるように歌われます。途中「気をつけるんだよ」のところでは一瞬音楽が翳りますが、またすぐに冒頭の弾けるようなメロディが戻ってきます。北欧と睡蓮という取り合わせはなんだか不思議な感じもしなくはないのですが、調べた限りではこの花は睡蓮で間違いないようです。またタイトルは英語にすると“with a water-lily”ということで、花を手に持っている様子を歌っているのですね。「睡蓮を手に」といった邦題も見たことがあります。真ん中の「花たち」と訳した部分は原詩ではliljerなので直訳すると「ユリ」ですが、ここで歌われているのはwater-lilyなのでたぶんタイトルと同じ睡蓮のことを言っているのでしょう。
ゆらめきながら眠っているのがまさにこの花の描写です。睡蓮たちがとしても良かったのですが、くどくなるので「花たち」としました。
また音楽が翳るところに出てくる水の精(N?kke ニュック(ニッカー))は、ヨーロッパのもっと南の方ではニクセと呼ばれているのと同じものでしょう。人間に危害を加えることもある恐ろしい妖精です。
それとここで私は「きみ」と訳しましたが、BarnはもともとBaby/Childの意味です。以前ロシア語で同じように話題となったDitja(Child)と議論は同じです。恋人を「ベイビー」と呼ぶのは西欧圏ではわりと普通なのでしょうかね。

( 2007.03.02 藤井宏行 )


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