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Lauf der Welt   Op.48-3  
  6 Sanger
世の中なんてそんなもの  
     6つの歌曲

詩: ウーラント (Johann Ludwig Uhland,1787-1862) ドイツ
    Lieder  Lauf der Welt (1808)

曲: グリーグ (Edvard Grieg,1843-1907) ノルウェー   歌詞言語: ドイツ語


An jedem Abend geh ich aus,
Hinauf den Wiesensteg.
Sie schaut aus ihrem Gartenhaus,
Es stehet hart am Weg.
Wir haben uns noch nie bestellt,
Es ist nur so der Lauf der Welt.

Ich weiß nicht,wie es so geschah,
Seit lange küß ich sie.
Ich bitte nicht,sie sagt nicht: ja!
Doch sagt sie: nein! auch nie.
Wenn Lippe gern auf Lippe ruht,
Wir hindern's nicht,uns dünkt es gut.

Das Lüftchen mit der Rose spielt,
Es fragt nicht: hast mich lieb?
Das Röschen sich am Taue kühlt,
Es sagt nicht lange: gib!
Ich liebe sie,sie liebet mich,
Doch keines sagt: ich liebe dich!

毎晩 ぼくは出かけてく
登っていくんだ 牧場の小道を
あの娘は覗いてるぞ 自分の小屋から外を
小屋は道のすぐそばだ
ぼくらは決して 会う約束をしてたんじゃない
でもそんなもんだよね 世の中なんて

どうしてそうなっちゃったのか分かんないけど
ぼくはあの娘に長いキッスをしてた
ぼくは求めてはいないし あの娘は言わなかった「いいわ!」とは
でも言わなかったけれどもね ダメよ!とも
唇がうれしそうに 唇に重なったときに
どちらもやめようとはしなかったんだ それが素敵だったから

そよ風がバラにいたずらしても
花は聞かない 「愛してくれるわよね?」とは
小さいバラが露に濡れても
バラは「濡らしてよ」とは言わない
ぼくはあの娘を愛してるし あの娘はぼくを愛してるけれど
だけどどちらも言わないんだ「愛してるよ!」 とは



ウーラントの民謡風の素朴なドイツ語詩に、グリーグもまたなんとも可愛らしいメロディを付けました。いやあ若いっていいですねえ、と微笑んでしまうような素敵な歌です。「言葉はいらない、ただ愛し合おう」ってな感じでしょうか。詞も曲もティーンズポップスみたいなイメージですのでそんな雰囲気を精一杯出してみたつもりですがいかがなものでしょう。
題名のLauf der Welt (The Way of the World)は慣用句のようで、日本語では「世のならい」や「世の常」という邦題になっていることが多いようですが、歌詞の中にもこのフレーズは出てきていて、もうちょっと口語的なくだけた感じが欲しかったのでこんな感じにしてみました。グリーグもわざわざここのフレーズだけを2回繰り返して思い切りユーモラスに強調していますのでこの訳でもそんなにマズいことはないでしょう。というよりもグリーグがこの詩に感じ取った雰囲気はこの訳詞みたいな内容ではないかと私は確信します。ホントは最後の節の「愛してくれるわよね?」は「責任とってよ」...「濡らしてよ」のところは「もっとしてえ」なんて感じのニュアンスとも取れたのですが、そうするとあまりに翻訳者の品格が貶められてしまいそうなのでそこまではできませんでした。でもドイツ語に詳しい方、実のところはどうなのでしょう...
北欧の夏のリゾート、ひと夏の恋を満喫する「リゾ・ラバ」といったところでしょうか。80年代末のバブルの頃は日本でもこんな感じのポップスが当たり前のように巷に溢れていたことを懐かしくもほろ苦く思い出してしまいました。

( 2007.02.09 藤井宏行 )


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